研究課題/領域番号 |
19K09140
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小池 聖彦 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院准教授 (10378094)
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研究分担者 |
田中 千恵 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (50589786)
小林 大介 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (30635595) [辞退]
神田 光郎 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (00644668)
澤木 康一 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (60815033)
小寺 泰弘 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10345879)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 食道癌 / 抗体医薬 / コンパニオン診断 |
研究実績の概要 |
食道癌は多様な進展経路を持つ予後不良な疾患であるが、本邦において男女ともに癌死亡者数が増加しており、その克服は重要な課題である。切除不能・再発食道癌は言うに及ばず、根治切除後も高頻度に再発をきたし不良な転帰をたどることが臨床上の大きな問題となっており、治療成績の改善には抗腫瘍薬の開発が不可欠である。食道癌は消化管通過障害を来しやすく安定した内服が難しいこと、食道切除術は非常に侵襲度が大きく術後QOLも低下しやすいことから、化学療法のコンプライアンスが得られにくい。近年は術前治療に重きを置いた殺細胞性抗腫瘍薬を併用したレジメン開発が試みられてきたが、有害事象が強く、効果も限定的と言わざるを得ない。そこで治療の選択肢を拡大させうる分子標的治療薬の開発が望まれている。我々は、既存の分子標的治療薬とは全く異なる標的としてneuronal pentraxin receptor (NPTXR)を同定し、その食道癌における機能を調べることでメカニズムを明らかとするデータを得つつ、特異的抗体医薬開発の糸口をつかむことを本研究の目的とした。同時に、個別化治療の実現に向けて重要な、奏効度を事前に予測しうるコンパニオン診断法開発に向けてのデータ構築を目指す。まず、shRNAを用いた安定的NPTXRノックダウン食道扁平上皮癌細胞株を樹立し、機能解析を進めている。さらに、抗原性・親水性予測に基づいて抗NTPXR抗体の合成を完了している。研究計画にもとづいて、食道扁平上皮癌細胞におけるNPTXRの機能解析、抗腫瘍剤感受性への影響、癌関連主要pathwayへの干渉、抗NPTXR抗体の食道癌全身転移モデル治療効果の評価、コンパニオン診断薬開発のための臨床検体中NPTXR発現解析を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに、NPTXRの機能解析を進めた。shRNAによる安定的ノックダウン株を用いた癌細胞機能の変化を評価したところ、ノックダウン株では親株と比較して細胞増殖能の低下、アポトーシス細胞比の増加、ミトコンドリア膜電位脱分極増加が認められた。さらに癌の転移進展に重要な浸潤能、遊走能、接着能のいずれもNPTXRノックダウンにより抑制されていた。in vivo実験としてマウス皮下腫瘍モデルによる解析を行ったところ、ノックダウン株では造腫瘍能が有意に低下していた。NPTXRの発現ベクターによる強制発現では、明らかな細胞形質の変化を認めなかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、予定に沿った研究計画を遂行する。抗腫瘍剤感受性への影響を調べるため、親株と安定的NPTXRノックダウン株の間で食道癌のkey drugである5-FUとCDDPの感受性をWST-8法で比較する。NPTXRの悪性腫瘍における役割には未知の部分が大きく、どのようなsignaling pathwayとの干渉を有するのかを知ることは、その特性を理解するために重要である。Antibody arrayを用いて親株と安定的NPTXRノックダウン株における細胞内signaling pathwayのリン酸化について網羅的に比較し、干渉が示唆された経路についてWestern blotting法により追加・検証解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞培養、細胞機能解析に必要な試薬類の経費に未使用分が生じたが、次年度に実施するpathway解析での細胞培養、蛋白、核酸抽出に使用する予定である。
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