研究実績の概要 |
【目的】原発性肝癌の大部分は肝細胞癌(HCC)と肝内胆管癌(iCCA)であるが両者の中間的性質を有する亜分類が存在する.同一腫瘍内にHCC成分とCCA成分とを持つ混合型肝癌(cHCC-CCA),細胆管に類似する細胆管癌(CLC)である.本研究は中間的性質をもつこれらの腫瘍の臨床病理学的特徴を検討し,次世代シーケンサーを用いたゲノム解析を目的とした. 【方法】cHCC-CCAとCLCは2005年から2018年の当院における原発性肝癌1035切除例(肝移植を含む)を対象とした. 【結果】cHCC-CCA:cHCC-CCAは17患者20切除例(再発3例を含む), 1.9%に認められた.9患者において再発の病理診断がなされているが,4患者でcHCC-CCAとして,4患者でHCCとして,1患者でCCAとして再発した.遺伝子解析が可能であった症例は13例であった.腫瘍径3cm未満の6例では全例TP53の遺伝子変異を有していたが3cm以上の7症例では1例のみであった.腫瘍径3cm以上の腫瘍は多彩な遺伝子pathwayで変異が見られた.Mutation signature解析ではTP53変異陽性腫瘍はより肝細胞癌に類似したパターンであった. CLC:CLCは8患者9切除例(再発1例を含む)0.87%に認められた.CLCでは肝炎ウイルスの背景は認めなかったのに対してiCCAはC型肝炎症例が有意に多かった.全生存率ではCLCの方がiCCAより予後が良い傾向にあった.再発に対して2患者で再切除が行われた.1例は肝再発で病理もCLCであり,もう一例はリンパ節転移で病理はiCCAだった.遺伝子解析が可能であった症例は8例であった.ARID1A, KRAS, IDH1, HRAS, GNAS, ARID2, ARID1Bといった胆道癌に特徴的とされているような遺伝子変異を認めた.
|