研究実績の概要 |
本研究の目的は、肝細胞癌において、腫瘍細胞由来エクソソームを介した前転移ニッチ形成機構の解明と、中心的役割を果たすmiRNAの同定・機能解析により肝細胞癌患者の予後を改善することである。 当該年度においては、樹立した肝高転移能株(HuH7-M)を用いて、親株(HuH7-P)の機能比較を、MTT assay, invasion assay, transendothelial migration assay, sphere formation assay, Annexin V analysisを行った。また、HuH7-PとHuH7-Mの細胞培養上清よりそれぞれエクソソームを抽出し、エクソソームの腹腔内投与により、親株の脾臓内投与による肝への腫瘍形成率を検討した結果、高転移能株より抽出したエクソソームの投与群にて、腫瘍形成率の増加を認めた。エクソソームによる網羅的なmiRNAの発現解析を行い、HuH7-PとHuH7-Mの2群間にて比較検討を行った。 当該年度における研究結果は、HuH7-PとHuH7-Mをin vitroで比較すると増殖能の亢進、apoptosis、anoikisの抑制を認めた。浸潤能、遊走能の変化は見られなかった。また、HuH7-PとHuH7-Mのそれぞれの培養上清よりエクソソームを抽出し、転移能の変化をin vivoで検討したところ、HuH7―P由来のエクソソーム投与群では腫瘍の形成を認めなかったのに対して、HuH7-M由来エクソソーム投与群において腫瘍生着率の増加を認めた。HuH7-P, HuH7-M由来エクソソームをmicroarray解析し、HuH7-M由来エクソソームで発現上昇を認めたmiRNAの同定・解析を現在実施中である。
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