研究課題
本研究者らは近年、大腸癌・大腸腺腫の網羅的遺伝子発現解析およびタンパク解析などから、ミスマッチ修復欠損(dMMR)/マイクロサテライト不安定性の高い(MSI-H)大腸癌(dMMR/MSI-H大腸癌)の発癌過程において、特定の糖転移酵素遺伝子がメチル化により発現抑制されること、それらが予後不良に関連するという新規知見を得た。またその結果、短縮型癌関連糖鎖の高発現が誘導されることを各種in vitro解析により確認している。本研究課題は、大規模症例を用いたゲノム医学・マルチオミクスと糖鎖生物学・分子生物学的手法の統合的解析により、癌細胞上の短縮型糖鎖抗原誘導のメカニズムと、免疫抑制的微小環境に与える影響を検討し、バイオマーカーおよび治療標的としての可能性に迫るものである。大腸癌における癌関連短縮型糖鎖抗原および関連する糖転移酵素を研究の軸とし、ゲノム・エピゲノム異常を介した短縮型糖鎖抗原誘導機構の解明、さらにそれを背景とした免疫学的微小環境(免疫細胞浸潤、免疫逃避)への影響などを、大腸癌組織の免疫組織学的染色を入り口として各種検討を行っている。特にO型糖鎖構造のコアとなるTn抗原に着目し検討を進めている。
2: おおむね順調に進展している
特定の短縮型糖鎖構造に着目した免疫組織学的検討により、糖鎖と免疫抑制の関連について臨床的側面から検討することができた。
大腸癌組織と臨床情報の集積を進め、免疫染色を拡大する。ゲノムデータとの関連付け、機能的意義、免疫学的微小環境の制御機構への展開など種々の解析プラットフォームを活用した研究を予定している。
本研究テーマは当研究室で以前から取り組んでいたものに関連しており、抗体などの一般試薬、消耗品や臨床検体がある程度研究室内に揃っており、本研究の予備実験段階においては新規の購入に対する物品費が生じにくかったことなどから次年度使用額が生じた。次年度使用額は細胞実験などの各種物品・消耗品費に充当する。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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