研究課題/領域番号 |
19K09152
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
田中 肖吾 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (50382114)
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研究分担者 |
新川 寛二 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (00554932)
森岡 与明 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (30382154)
久保 正二 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (80221224)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肥満 / 肝癌 / 腸内フローラ / 腸管バリア機構 |
研究実績の概要 |
本研究は肥満が肝発癌に及ぼす影響について腸内細菌叢(フローラ)のバランスの変化(破綻)がかかわっていることを解明し、それに基づいた発癌予防策の確立を目的として行っている。2019年度はC型肝炎に対し抗ウイルス薬で著効したのちに肝癌が発生し手術を行った症例の中でBMI≧30Kg/m2 15例(肥満群)とBMI<30Kg/m2 15例(非肥満群)の腸内フローラ組成を解析した。その結果、肥満群では非肥満群と比較し、Firmicutes門が増加し、Bacteroidetes門が減少していた。そしてこの腸内フローラの破綻が、エンドトキシン産生や腸管壁バリア機構に障害を起こし、腸肝循環へ影響を及ぼし2次胆汁酸の増加そして肝発癌へ誘導する機序を考え、腸管壁バリア機構の指標である血清ジアミンオキシターゼ(DAO)および糞便中IgAを測定した。その結果、肥満群では非肥満群と比較して血清DAOが減少し、糞便中IgAが増加していた。これらのことより、肥満肝癌患者では腸内フローラの破綻および腸管壁バリア機構の異常が認められた。肥満治療により腸内フローラおよび腸管バリア機構が修復に働き肝発癌を抑制ができるかを検討するために臨床試験を開始している。同意を得られた肥満患者に対し食事療法(25kcal/kg標準体重/日,治療前体重の3%以上の減量目標)による肥満治療を行い、また同意を得られた非肥満患者には30kcal/kg標準体重/日の標準的な食生活を指導する臨床試験を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床試験を進めているが、BMI30以上の肝癌症例数が例年よりも少ないことと、非肥満患者では臨床試験参加される方が少なかった。
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今後の研究の推進方策 |
臨床試験を2020年度は継続して行い、肥満群および非肥満群で、術前、術後(肥満治療開始前)、肥満治療終了直後、術後1年後に腸内フローラ組成の解析、血清DAO、糞便中IgA測定、肝硬度の評価、癌の発生について検討する。 そしてC型肝炎根治後の肝癌に対して肝切除を施行した症例における肝癌発生に、肥満に伴う腸内フローラの変化がトリガーになっているのか、肥満治療(+運動療法)は肝発癌抑制に関与するのかを動物実験で検証する。無菌マウスに肥満もしくは非肥満SVR患者の術後の糞便を移植する。2か月後に定着を確認後、肝発癌を発生させるためにdiethyl-nitrosamine を腹腔内投与する。飼育開始から8週間、超高脂飼料を投与する。その後、無治療、肥満治療、肥満治療+運動療法を行う(24週間)群を作り36週令での癌発生について検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床試験の登録症例数が想定よりも少なかったため、検体測定などで使用する金額が少なくなった。次年度に登録症例を増やす予定であり、検体測定などに使用していく。
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