肥満からの肝発癌における腸内細菌叢の役割解明とそれに基づいた発癌予防策の確立

2023 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19K09152
• 研究機関: 大阪公立大学
• 研究代表者: 田中 肖吾 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 客員研究員 (50382114)
• 研究分担者: 新川 寛二 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 講師 (00554932) ; 森岡 与明 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30382154) ; 久保 正二 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 客員教授 (80221224)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: 肥満治療 / 肝癌 / 腸内フローラ

研究実績の概要

本研究は肥満が肝発癌に及ぼす影響について腸内細菌叢（フローラ）のバランスの変化（破綻）がかかわっていることを解明し、それに基づいた発癌予防策の確立を目的として行った。肥満患者に対する肥満治療で腸内フローラの破綻が軽減し、癌再発が抑制されるかに関して臨床試験を行った。同意を得られた肥満患者に対し食事療法（25kcal/kg標準体重/日，治療前体重の3%以上の減量目標）による肥満治療を行い（肥満群）、また非肥満患者には30kcal/kg標準体重/日の標準的な食生活を指導する（非肥満群）臨床試験を行った。肥満症例では、登録症例全例で肥満治療により全例治療前体重の3%以上の体重減少を達成した。手術前の腸内フローラは肥満群（9例）では非肥満群（6例）と比較し、Firmicutes門が増加し、Bacteroidetes門が減少していた。肥満群と非肥満群では無再発生存率に差は認められず（3年／4年：88.9%／88.9％ vs 83.3%／83.3％, p = 0.806）、Histologicalに臨床試験以前の肥満症例と比較して無再発生存率は2群と比較して統計学的な有意差は認められなかったが（3年75.0％、P＝0.471）、4年無再発生存率が60.0％と低下し、肥満治療群で背景肝からの再発（多中心性発生3年以降の再発）が抑制される可能性が示唆された。無菌マウスに肥満治療前後の糞便を移植し肝発癌に差が認められるかを試みたが、糞便生着後発癌誘導後に全身状態悪化したため中断しSacrificeした。肝組織の病理学的所見では肥満治療後糞便移植マウスでは肥満治療前糞便移植マウスに比べ肝障害が高度であった。臨床的には肥満治療は肥満肝癌術後再発を抑制されることが示唆されたが肥満治療による腸内フローラの変化が誘因であるかまでは解明できなかった。

研究成果

• [雑誌論文] Impact of frailty on long-term outcomes after liver resection for hepatocellular carcinoma in elderly patients: A prospective study. (2024)
  • 著者名/発表者名: Okada T, Tanaka S, Shinkawa H, Ohira G, Kinoshita M, Amano R, Kimura K, Nishio K, Tauchi J, Uchida-Kobayashi S, Fujii H, Ishizawa T.
  • 雑誌名: Asian J Surg 巻: 47 ページ: 147-153
  • DOI: 10.1016/j.asjsur.2023.05.139
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Application of Indocyanine Green Fluorescence Imaging for Tumor Localization during Robot-Assisted Hepatectomy. (2023)
  • 著者名/発表者名: Kinoshita M, Kawaguchi T, Tanaka S, Kimura K, Shinkawa H, Ohira G, Nishio K, Tanaka R, Kurihara S, Kushiyama S, Ishizawa T.
  • 雑誌名: Cancers (Basel) 巻: 15 ページ: 4205
  • DOI: 10.3390/cancers15174205.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Deep Learning Model Based on Contrast-Enhanced Computed Tomography Imaging to Predict Postoperative Early Recurrence after the Curative Resection of a Solitary Hepatocellular Carcinoma. (2023)
  • 著者名/発表者名: Kinoshita M, Ueda D, Matsumoto T, Shinkawa H, Yamamoto A, Shiba M, Okada T, Tani N, Tanaka S, Kimura K, Ohira G, Nishio K, Tauchi J, Kubo S, Ishizawa T.
  • 雑誌名: Cancers (Basel) 巻: 15 ページ: 2140
  • DOI: 10.3390/cancers15072140.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Positioning of Minimally Invasive Liver Surgery for Hepatocellular Carcinoma: From Laparoscopic to Robot-Assisted Liver Resection (2023)
  • 著者名/発表者名: Tanaka S, Kubo S, Ishizawa T
  • 雑誌名: Cancers (Basel) 巻: 15 ページ: 488
  • DOI: 10.3390/cancers15020488.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] The Prognostic Value of Preoperative Serum Markers and Risk Classification in Patients with Hepatocellular Carcinoma. (2023)
  • 著者名/発表者名: Ota M, Komeda K, Iida H, Ueno M, Kosaka H, Nomi T, Tanaka S, Nakai T, Hokutou D, Matsumoto M, Hirokawa F, Lee SW, Kaibori M, Kubo S.
  • 雑誌名: Ann Surg Oncol 巻: 30 ページ: 2807-2815
  • DOI: 10.1245/s10434-022-13007-9
  • 査読あり
• [雑誌論文] Surgical Outcomes for Hepatocellular Carcinoma in Patients with Child-Pugh Class B: a Retrospective Multicenter Study. (2023)
  • 著者名/発表者名: Tanaka S, Noda T, Komeda K, Kosaka H, Iida H, Ueno M, Hokuto D, Ikoma H, Nakai T, Kabata D, Shinkawa H, Kobayashi S, Hirokawa F, Mori H, Hayami S, Morimura R, Matsumoto M, Ishizawa T, Kubo S, Kaibori M.
  • 雑誌名: J Gastrointest Surg 巻: 27 ページ: 283-295
  • DOI: 10.1007/s11605-022-05549-w
  • 査読あり
• [雑誌論文] Share Efficacy of rechallenge transcatheter arterial chemoembolization after lenvatinib treatment for advanced hepatocellular carcinoma (2023)
  • 著者名/発表者名: Uchida-Kobayashi S, Kageyama K, Takemura S, Matsumoto K, Odagiri N, Jogo A, Kotani K, Kozuka R, Motoyama H, Kawamura E, Hagihara A, Yamamoto A, Fujii H, Tanaka S, Enomoto M, Tamori A, Miki Y, Kubo S, Kawada N.
  • 雑誌名: JGH Open 巻: 6 ページ: 754-762
  • DOI: 10.1002/jgh3.12819
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Short- and long-term outcomes of laparoscopic versus open repeat liver resection for hepatocellular carcinoma: A multicenter study. (2023)
  • 著者名/発表者名: Nomi T, Kaibori M, Tanaka S, Hirokawa F, Hokuto D, Noda T, Ueno M, Nakai T, Ikoma H, Iida H, Matsui K, Komeda K, Hayami S, Eguchi H, Matsumoto M, Morimura R, Maehira H, Yoshikawa T, Kubo S.
  • 雑誌名: J Hepatobiliary Pancreat Sci 巻: 30 ページ: 283-292
  • DOI: 10.1002/jhbp.1222
  • 査読あり
• [雑誌論文] Increasing incidence and severity of post-hepatectomy adhesion around the liver may be influenced by the hepatectomy-related operative procedures. (2023)
  • 著者名/発表者名: Kinoshita M, Tanaka S, Kodai S, Takemura S, Shinkawa H, Ohira G, Nishio K, Tauchi J, Kanazawa A, Kubo S
  • 雑誌名: Asian J Surg 巻: 46 ページ: 228-235
  • DOI: 10.1016/j.asjsur.2022.03.044
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] Development of a Nomogram to Predict Postoperative Loss of Independence 1 year after Liver Resection in Older Adults:A Prospective Multicenter Study with Bootstrap Analysis (2023)
  • 著者名/発表者名: Tanaka s,Iida H,Ueno M,Hirokawa F,Nomi T,Nakai T,Ikoma H,Noda T,Ishizawa T,Kaibori M
  • 学会等名: The 32nd Annual Meeting of the Asian Pacific Association for the Study of the Liver
  • 国際学会
• [学会発表] Incidence and Severity of Post-hepatectomy Adhesion around the Liver: Special Reference to Operative Procedures (2023)
  • 著者名/発表者名: Kinoshita M,Tanaka S,Kodai S,Shinkawa H,Ohira G,Nishio K,Tauchi J,Kimura K,Kanazawa A,Ishizawa T
  • 学会等名: The 32nd Annual Meeting of the Asian Pacific Association for the Study of the Liver
  • 国際学会
• [学会発表] 胆道癌におけるIL-6の産生と癌関連線維芽細胞との相互作用 (2023)
  • 著者名/発表者名: 木村 健二郎, 江口 真平, 田中 涼太, 谷 直樹, 西尾 康平, 大平 豪, 木下 正彦, 田中 肖吾, 新川 寛二, 石沢 武彰
  • 学会等名: 第61回日本癌治療学会学術集会
• [学会発表] 当科における肝切除後手術部位感染の成績 (2023)
  • 著者名/発表者名: 白井 大介, 新川 寛二, 木下 正彦, 田内 潤, 西尾 康平, 大平 豪, 木村 健二郎, 天野 良亮, 田中 肖吾, 石沢 武彰
  • 学会等名: 第78回日本消化器外科学会総会
• [学会発表] 局所進行切除不能膵癌に対する腹腔動脈合併膵頭十二指腸切除術の成績 (2023)
  • 著者名/発表者名: 木村 健二郎, 天野 良亮, 田内 潤, 大平 豪, 西尾 康平, 木下 正彦, 新川 寛二, 谷 直樹, 田中 肖吾, 石沢 武彰
  • 学会等名: 第78回日本消化器外科学会総会
• [学会発表] 切除可能膵癌に対する術前・術後化学療法の有効性の検証 (2023)
  • 著者名/発表者名: 西尾 康平, 木村 健二郎, 木下 正彦, 田内 潤, 新川 寛二, 大平 豪, 天野 良亮, 田中 肖吾, 石沢 武彰
  • 学会等名: 第78回日本消化器外科学会総会
• [学会発表] Child-Pugh分類B肝細胞癌に対する腹腔鏡下肝切除の治療成績に関する多施設共同研究 (2023)
  • 著者名/発表者名: 田中 肖吾, 野田 剛広, 米田 浩二, 飯田 洋也, 上野 昌樹, 北東 大督, 生駒 久視, 中居 卓也, 石沢 武彰, 海堀 昌樹
  • 学会等名: 第78回日本消化器外科学会総会
• [学会発表] 進行・再発肝細胞癌に対する分子標的薬を導入した外科治療戦略 (2023)
  • 著者名/発表者名: 新川 寛二, 田中 肖吾, 天野 良亮, 木村 健二郎, 大平 豪, 西尾 康平, 木下 正彦, 田内 潤, 白井 大介, 石沢 武彰
  • 学会等名: 第78回日本消化器外科学会総会
• [学会発表] 人工知能による深層学習を活用した術前CT画像を用いた肝細胞癌肝切除術における手術リスク予測モデルの開発 (2023)
  • 著者名/発表者名: 岡田 拓真, 新川 寛二, 田中 肖吾, 天野 良亮, 木村 健二郎, 大平 豪, 西尾 康平, 田内 潤, 木下 正彦, 石沢 武彰
  • 学会等名: 第78回日本消化器外科学会総会
• [学会発表] ロボット支援下肝切除の現況と今後の展望 ロボット支援下肝切除導入期の手術成績と今後の展望 (2023)
  • 著者名/発表者名: 木下 正彦, 田中 肖吾, 岡田 拓真, 白井 大介, 田内 潤, 西尾 康平, 大平 豪, 新川 寛二, 木村 健二郎, 石沢 武彰
  • 学会等名: 第78回日本消化器外科学会総会
• [学会発表] 術中因子を加味した肝細胞癌術後肝不全の予測 (2023)
  • 著者名/発表者名: 岡田 拓真, 新川 寛二, 竹村 茂一, 田中 肖吾, 天野 良亮, 木村 健二郎, 大平 豪, 西尾 康平, 田内 潤, 木下 正彦, 白井 大介, 川口 貴士, 石沢 武彰
  • 学会等名: 第123回日本外科学会総会
• [学会発表] 高齢者肝細胞癌の術後成績予測に対するCharlson併存疾患指数の有用性 (2023)
  • 著者名/発表者名: 新川 寛二, 田中 肖吾, 天野 良亮, 木村 健二郎, 大平 豪, 西尾 康平, 木下 正彦, 田内 潤, 白井 大介, 岡田 拓真, 谷 直樹, 川口 貴士, 石沢 武彰
  • 学会等名: 第123回日本外科学会総会
• [学会発表] Child-Pugh分類B肝細胞癌に対する外科治療成績 多機関共同研究 (2023)
  • 著者名/発表者名: 田中 肖吾, 野田 剛広, 米田 浩二, 小坂 久, 飯田 洋也, 上野 昌樹, 北東 大督, 生駒 久視, 中居 卓也, 新川 寛二, 小林 省吾, 廣川 文鋭, 森 治樹, 速水 晋也, 森村 玲, 松本 正孝, 石沢 武彰, 久保 正二, 海堀 昌樹
  • 学会等名: 第123回日本外科学会総会
• [学会発表] 術前CTを導入した深層学習による肝細胞癌切除後の早期再発予測モデル開発 (2023)
  • 著者名/発表者名: 木下 正彦, 新川 寛二, 植田 大樹, 松本 利雅, 山本 晃, 岡田 拓真, 谷 直樹, 川口 貴士, 白井 大介, 田内 潤, 西尾 康平, 大平 豪, 木村 健二郎, 田中 肖吾, 天野 良亮, 石沢 武彰
  • 学会等名: 第123回日本外科学会総会
• [学会発表] 肝細胞癌に対する腹腔鏡下肝切除の術後感染に対する意義 (2023)
  • 著者名/発表者名: 白井 大介, 新川 寛二, 谷 直樹, 岡田 拓真, 川口 貴士, 木下 正彦, 田内 潤, 西尾 康平, 大平 豪, 木村 健二郎, 天野 良亮, 田中 肖吾, 竹村 茂一, 石沢 武彰
  • 学会等名: 第123回日本外科学会総会