【背景】現在、胃癌・食道癌に対しては免疫チェックポイント阻害剤による従来の殺細胞性抗がん剤への併用による上乗せ効果が臨床試験により明らかになり、実臨床で使用されている。【目的】免疫チェックポイント阻害剤の効果と関連する局所免疫微小環境と抗がん剤による併用効果のメカニズムにつき解析し、今後の治療戦略を提示する【結果】1.胃癌・食道癌局所の抗腫瘍免疫誘導機構について腫瘍浸潤免疫細胞を解析したところ、腫瘍周囲にB細胞およびT細胞がクラスターを形成しいわゆるリンパ構造(3次リンパ組織;TLS)を呈している症例の予後は良好であった。TLS周囲には、エフェクターT細胞であるレジデントメモリーT細胞(Trm)が存在していた。一方でリンパ節内のエフェクターT細胞は抑制されていた。2.免疫チェックポイント阻害(ICI)治療効果と局所免疫環境との関連胃癌切除後再発症例に対してICI治療を施行した症例において、原発巣内のTLSやTrmの存在はICIの奏効やirAEの発生と関連し長期予後が得られた。3.殺細胞性抗がん剤治療による局所免疫に及ぼす影響の検討食道癌細胞株に5-FUおよびCDDPを暴露させたところ、HMGB!発現が上昇し、培養上清添加により樹状細胞が成熟化した。また、術前化学療法後に組織学的奏効を認めた腫瘍周囲には、濾胞形成を伴うTLSの成熟化が認められた。4.リンパ節内の免疫機構の意義胸部食道癌症例の反回神経周囲リンパ節内の免疫状態について検討したところ、Trmが多く存在した例では、術前化学療法の効果や良好な予後と関連していた。【結語】局所免疫は殺細胞性抗がん剤によって修飾を受けるが、レジデントメモリー細胞やTLSが存在していた場合抗腫瘍免疫が誘導される可能性があり、ICI治療の良い適応となると考えられた。
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