研究課題
急性肝障害後の炎症収束や組織修復過程が阻害されると組織修復や組織再生が十分に行われないことになる。その結果、肝障害や肝不全に至る場合には患者のQOLは低下する。私たちは。これまでマクロファージなどの免疫細胞が生理活性脂質を介して急性肝障害後の肝修復に寄与することを示してきたが、修復制御機構については十分理解されていない。一方、リンパ管は間質液回収による組織恒常性維持、免疫細胞運搬通路として免疫調節あるいは脂肪吸収などの役割を果たす。炎症時には免疫細胞がリンパ管内に遊走し、局所での免疫炎症反応に関与する。またリンパ管は細胞外組織に貯留した組織液の除去や免疫細胞の動員などを目的として、構造や機能を変化させ、リンパ管を増殖新生することで、組織修復に関与することが見いだされてきた。しかしながら、肝修復におけるリンパ管の役割は不明である。今回、私たちはマウスを用いて急性肝障害モデルとして肝虚血再灌流モデルを作成したところ、肝修復期に肝壊死組織周囲とくに門脈周囲にダイナミックにリンパ管が新生する実験モデルを見いだした。肝虚血再灌流障害後の肝修復期にはリンパ管新生とともに、リンパ管新生因子であるVEGF-CやVEGF-Dが産生されていた。さらにこれらリンパ管新生因子は集積マクロファージが産生していることが分かった。またリンパ管新生因子受容体VEGFR3の阻害薬を投与すると、リンパ管新生抑制とともに、再潅流障害後の肝修復が遷延した。反対にリンパ管新生因子VEGF-CVEGF-Dを投与すると、肝修復の促進と肝障害の軽減がみれられた。以上の結果から、リンパ管新生促進は肝障害後の肝修復を促進する可能性が示唆された。
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