研究課題/領域番号 |
19K09158
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
神垣 隆 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (20372641)
|
研究分担者 |
瀧本 理修 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (10336399)
杉本 起一 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30407275)
近藤 聡英 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (70338359)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | PD-1 / Tリンパ球 / 腫瘍特異抗原 |
研究実績の概要 |
本年度の研究期間内に以下の成果を得た。①PD-1陽性細胞を用いた疑似末梢血モデルを用いたミニスケールでの単離条件の検討:ハイブリドーマ法にて有望なマウス抗ヒトPD-1抗体3クローンを選択した。まず、PD-1/PD-L1シグナル阻害活性を有する既存の抗ヒトPD-1抗体を用いてPD-1陽性細胞に対するビオチン化抗体の至適反応条件を検討した。ヒトPD-1発現マウスPro-B細胞株(PD-1 Ba/F3)を用いて検討し、至適な反応条件を抗体濃度0.1µg/1x106 cellsと定めた。次に、疑似末梢血モデルとして、PD-1 Ba/F3と陰性細胞(Mock Baf/F3)を用いて、PD-1陽性細胞率5および15%に設定し、ビオチン化抗PD-1抗体とアビジン標識磁気ビーズを用いて陽性細胞の単離を行ったところ、5%では86.3%、15%では81.9%の回収効率で、かつ、いずれも99%以上の純度で、疑似末梢血モデル中のPD-1陽性細胞を単離できた。②固形癌患者末梢血を用いたミニスケールでのPD-1陽性Tリンパ球単離条件の検討:固形癌患者由来の末梢血単核球についてフェノタイプ解析を行ったところ、リンパ球では10-30%程度のPD-1陽性を認め、アビジン磁気ビーズの反応条件も加味した最適条件のもと、4例の固形癌患者末梢血よりPD-1陽性Tリンパ球の単離を試み、全症例において99%以上の純度でPD-1陽性Tリンパ球を得ることが可能であった。③PD-1陽性Tリンパ球の培養条件の最適化の検討:PD-1陽性Tリンパ球を末梢血より単離後、IL-2および腫瘍特異抗原ペプチドを用いて初期培養を行った結果、刺激直後に一過性に増殖を認めた。しかしながら、長期培養では細胞数は減少していくことから、PD-1陽性Tリンパ球の増殖能を維持するための方策が必要と考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度目標であった、①PD-1陽性細胞を用いた疑似末梢血モデルを用いたミニスケールでの単離条件の検討および、②固形癌患者末梢血を用いたミニスケールでのPD-1陽性Tリンパ球単離条件の検討については、達成目標であった単離条件を設定することができた。今回、目標達成できていない、③PD-1陽性Tリンパ球の培養条件の最適化の検討については、次年度での継続目標として設定されており、引き続き検討を行っていく。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、③PD-1陽性Tリンパ球の培養条件の最適化の検討を継続する。具体的にはビオチン化抗PD-1抗体とアビジン標識磁気ビーズで分離されたPD-1陽性Tリンパ球の培養条件を検討する。特に増殖能、PD-1発現、CD4/8比の観点から最適化を行う。 また、④PD-1陽性Tリンパ球中の真の腫瘍特異的Tリンパ球を選択するために、ネオアンチゲンペプチドを用いた効率的な刺激法と腫瘍特異Tリンパ球選択について検討を行っていく。具体的には、がん患者の末梢血から付着法を用いて単球より誘導した樹状細胞に、ネオアンチゲンペプチドを感作させ抗原提示細胞を作製する。浮遊細胞よりPD-1陽性Tリンパ球を単離し、樹状細胞刺激によるTh1サイトカインとPD-1、CD39およびCD103発現を指標にPD-1陽性Tリンパ球の抗原刺激条件を検討する。 また、それ以降については、がん患者末梢血を用いたラージスケールでのPD-1陽性Tリンパ球の単離と拡大培養を検討し、その標準業務手順書(SOP)の作製と可能であれば、その細胞を用いた養子免疫療法の臨床試験プロトコールの作製を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスによる影響で、本年度の最終月である2020年度3月の実験を含む研究が制限されたために次年度使用額が生じた。次年度は新型コロナウイルスによる緊急事態宣言解除後に、実施できなかった一部の実験について次年度使用額を使用したいと考える。
|