研究課題
「血中腫瘍細胞に対する脾臓の役割の解明」に関して研究中である。脾臓は全身の生体防御機構の一部を担う臓器であるが、腫瘍細胞に対する役割に関しては、未だ十分には解明されていない。本研究では大量肝切除前に門脈塞栓術を行う消化器癌患者を対象とし、門脈塞栓時の大動脈血(腹腔動脈直上)、脾静脈血、上腸間膜静脈血、門脈血、末梢血から採取された遊離した腫瘍細胞(Circulating tumor cell: CTC)のmRNA発現プロファイルを比較することで、脾臓内で免疫細胞と腫瘍細胞がどのような反応を起こしているかを推測する。本研究により脾臓の持つ抗腫瘍作用のメカニズムが解明されれば、新たな免疫治療法の開発に繋がる可能性がある。昨年度に本研究を日本医科大学付属病院倫理委員会に申請し承認が得られた。本研究の基盤となるliquid biopsyや門脈血行動態・脾臓に関する論文を2019年度に引き続き、2020年度も多数発表することができた。門脈塞栓時の採血症例は増加しており、研究は順調に進んでいる。また尿中循環DNAを用いた研究にも着手した。尿中に循環DNAが存在することはすでに知られていたが、我々は尿20mLから採取されるcfDNA量は血漿1 mLから採取されるcfDNA量よりも多いこと、RAS変異解析を行う場合血液由来cfDNAを用いるよりも尿由来cfDNAを用いた方が精度が高いことを明らかにした。(投稿準備中)。次年度は、更に症例数を蓄積するとともに、Liquid biopsyおよび門脈血行動態・脾臓の研究を進めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
2020年度の本研究の基盤となるliquid biopsyに関する論文として、①Circulating cell-free long DNA fragments predict post-hepatectomy recurrence of colorectal liver metastases. Eur J Surg Oncology 46: 108-114; 2020.②Emerging RAS, BRAF, and EGFR mutations in cell-free DNA of metastatic colorectal patients are associated with both primary and secondary resistance to first-line anti-EGFR therapy. Int J Clin Oncol 25: 1523-1532; 2020.③Methylation status and long-fragment cell-free DNA are prognostic biomarkers for gastric cancer. Cancer Med 10: 2003-2012; 2021.を発表した。また同じく2019年度の本研究の基盤となる門脈血行動態・脾臓に関する論文として、④脾臓「脾臓の外科」:脾臓解剖と脾臓疾患.消化器外科専門医の心得(下) 杏林社(東京)663-665;2020.⑩Management of portal hypertension based on portal hemodynamics. Hepatology Research 51: 251-262; 2021.を発表した。すでに門脈塞栓時の採血は開始しており、研究は順調に進んでいる。
尿中循環DNAを用いた研究にも着手した。尿中に循環DNAが存在することはすでに知られていたが、我々は尿20mLから採取されるcfDNA量は血漿1 mLから採取されるcfDNA量よりも多いこと、RAS変異解析を行う場合血液由来cfDNAを用いるよりも尿由来cfDNAを用いた方が精度が高いことを明らかにした(投稿準備中)。門脈塞栓時の採血施行できた症例数は増加しており、研究は順調に進んでいる。次年度は、更に症例数を蓄積するとともに、Liquid biopsyおよび門脈血行動態・脾臓の研究を進めていく予定である。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件) 図書 (5件)
Cancer Medicine
巻: 10 ページ: 2003~2012
10.1002/cam4.3755
Hepatology Research
巻: 51 ページ: 251~262
10.1111/hepr.13614
Journal of the Anus, Rectum and Colon
巻: 5 ページ: 1~10
10.23922/jarc.2020-061
European Journal of Surgical Oncology
巻: 46 ページ: 108~114
10.1016/j.ejso.2019.08.010
International Journal of Clinical Oncology
巻: 25 ページ: 1523~1532
10.1007/s10147-020-01691-0
World Journal of Surgery
巻: 44 ページ: 3086~3092
10.1007/s00268-020-05570-7
In Vivo
巻: 34 ページ: 2667~2673
10.21873/invivo.12086
巻: 50 ページ: 1244~1254
10.1111/hepr.13560
巻: 25 ページ: 2075~2082
10.1007/s10147-020-01763-1
巻: 26 ページ: 111~117
10.1007/s10147-020-01794-8
Journal of Surgical Oncology
巻: 123 ページ: 286~292
10.1002/jso.26245