研究課題/領域番号 |
19K09162
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大河内 信弘 筑波大学, 医学医療系, 客員教授 (40213673)
|
研究分担者 |
田村 孝史 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (20633192)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | NASH肝発癌 / ヒアルロン酸 / SGLT-2 |
研究実績の概要 |
当研究室で作成した新規NASHモデルマウスのプロトコールを改変し、NASH自然死と同様に肝臓に発がんする新規モデルマウスを作成した。腫瘍形成率は100%であり、背景肝はNASHに特徴的な病理所見を有していた。腫瘍部分の評価については、HE染色像に加えて免疫染色でCD34, glypican-3, AFP染色により肝細胞癌となっていることを確認した。腫瘍組織のwestern blotによる解析では、細胞増殖に関わるErkと癌遺伝子のcyclin D1の発現とストレス応答シグナルであるp38 MAPKの低下も認めた。ヒトにおける肝細胞癌において同様の変化が報告されていることから、ヒトNASH肝発癌と類似した機序での発癌が示唆された。 本研究の目的としては、発癌のメカニズムを解析することと新たな治療薬を探索・同定することにある。腫瘍治療モデルとしては、前述のNASH肝発癌モデル作成時に同時に24週間薬剤を投与し続けることとした。薬剤については、ヒアルロン酸とSGLT-2を用いた。 24週における肝体重比、脂肪体重比、腫瘍個数と最大腫瘍径に有意差はなかった。ヒアルロン酸投与モデルにおいては、腫瘍最大径が低い傾向(p=0.085)があったが、有意差は認めなかった。肝臓の病理学的な評価では、HE染色、Masson Trichrome染色、Oil-red-O染色でNASHとなっていることが確認された。また、薬剤投与モデルの両群でNASH肝発癌モデルに対して、有意に血糖値が低かった(p<0.05)。また病理学的な効果判定については、薬剤投与モデルにおいて、肝脂肪化や線維化の程度については有意差は認められなかった。結果としては、血糖値に有意な差が認められたものの、薬剤投与によるNASH進展抑制や腫瘍発生の抑制効果は認められなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
24週間にわたる薬剤投与モデルの作成が終了し、その評価を行えている。NASHにおいて重要とされる病理学的に評価した結果、大滴性脂肪沈着や線維化、炎症細胞浸潤については有意差が認められなかった。薬剤投与による差異がなかったことから、ヒアルロン酸の分子量を低くした低分子量ヒアルロン酸を用いて実験を行うことや、NASH肝発癌モデル作成に使用する薬剤の作用が強かった可能性があることから、NASH肝発癌モデルの薬剤を減量したモデルでの評価を予定している。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までにNASH肝発癌治療モデルの作成が終了しているが、これまでに治療モデルにおいて病理学的に脂肪肝や線維化に有意差は認められなかった。 ヒアルロン酸には、ヒアルロン酸分子量の違いにより作用も異なることが分かっているため、分子量の違いによって結果に変化が見られることが予想される。今回用いた分子量は80万であったが、20~30万程度の低分子量ヒアルロン酸を用いた実験により評価を行う予定である。また、我々が開発したNASH肝発癌モデルについて、薬剤を投与し続ける中で治療薬候補となる薬剤を投与しても効果発現が難しい可能性もある。そのため、モデル作成時に使用する薬剤を減量することや、モデル作成後に治療薬候補となる薬剤を投与する評価方法に変更する必要性があると考えている。
|