研究実績の概要 |
当研究室で作成したNASHモデルマウスのプロトコールを改変し、NASHを背景に肝臓に発がんするモデルマウスを作成した。腫瘍部分の免疫染色(CD34, glypican-3, AFP染色)により早期の肝細胞癌であることを確認した。腫瘍組織のwestern blotによる解析では、Erk、cyclin D1、p38 MAPKの変化があった。ヒト肝細胞癌で同様の変化が報告されており、類似した機序での発癌が示唆された。 本研究の目的は、発癌のメカニズムを解析し、新たな治療法を探索することにある。プロトコールは、NASH肝発癌モデル動物作成時に同時に薬剤を投与し続けることとした。薬剤は、耐糖能異常が発癌を誘導すると考え、SGLT-2とヒアルロン酸を用いた。 肝発癌のメカニズムは、HCCに関連する遺伝子群、NAFLDに関連する遺伝子群、発癌に関連する遺伝子群の発現変化が認められた。癌原遺伝子の1つであるSrcはqPCRでも発現上昇を認めた。ヒト肝癌において認められる遺伝子変動であり、SrcがNASH肝発癌の一因となっている可能性が示唆された。 24週時点における肝臓の病理学的な評価で、全群でHE染色、Masson Trichrome染色、Oil-red-O染色でNASH診断の所見が確認された。また、病理評価をImage Jを用いて定量評価したが、薬剤投与モデルに病理所見の改善は認められなかった。ヒアルロン酸投与モデルでは、肝体重比、脂肪体重比、腫瘍個数に有意差はなかった。腫瘍最大径が低い傾向にあったが、有意差は認めなかった(p=0.085)。空腹時血糖は有意に低下が認められた。SGLT-2投与モデルでは、脂肪体重比、腫瘍個数、腫瘍最大径に有意差はなかった。肝体重比と空腹時血糖は有意に低下が認められた。 薬剤投与群で血糖値に変化があったが、NASH進展抑制や腫瘍形成の治療効果は認めなかった。
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