研究課題/領域番号 |
19K09166
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
木下 淳 金沢大学, 医学系, 准教授 (90584855)
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研究分担者 |
原田 真市 金沢大学, 医学系, 准教授 (90272955)
伏田 幸夫 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (10301194)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 低酸素 / CD36 / FAO |
研究実績の概要 |
これまでに本研究において下記内容を明らかにした。 低酸素環境下で胃癌細胞株におけるCD36の発現が顕著に増加し、低栄養、脂肪酸添加の条件を付加することでさらにCD36発現は上昇した。しかし正常酸素濃度では、低栄養、脂肪酸添加の条件下でもCD36発現は上昇しなかった。低酸素環境下では、CD36高発現細胞株もコントロール株いずれも脂肪酸添加により遊走能、浸潤能の上昇を示した。一方、正常酸素濃度においてはCD36高発現細胞株のみが脂肪酸添加により遊走・浸潤能の上昇を示し、活性型Rac1およびCdc42の発現の増加が観察され、いずれもエトモキシル投与により減少した。CD36高発現細胞株を移植したマウスモデルでは、high fat diet群でnormal diet群に比べ多くの腹膜腫瘍が観察された。臨床病理学的検討では、腹膜播種病変の80%がCD36を高発現しており、低酸素マーカーであるCA9高発現部位と局在が一致し、またCD36発現と予後との有意な関連性が示され、CD36は多変量解析で独立した予後因子として抽出された。in vitroの結果から胃癌細胞におけるCD36発現上昇について低酸素が主要な因子であることが示唆された。臨床検体でも播種病変は原発巣比してCA9の発現が有意に高く、線維化や腫瘍内圧上昇に伴う血液潅流不良によるものと推察される。また、遊走能と浸潤能が低酸素もしくはCD36高発現により上昇し、エトモキシル投与により低下することから、腹腔内の低酸素環境がCD36発現を上昇させ、周囲脂肪細胞由来の脂肪酸を取り込むことで、癌細胞の転移能を高めていることが示唆される。これまでに悪性腫瘍において低酸素とCD36発現との関連を検討した報告はなく胃癌細胞において低酸素がCD36発現を誘導することを示したことが本研究のハイライトであると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに低酸素環境が胃癌細胞のCD36発現を誘導し、FFAを取り込むことで胃癌細胞の遊走能、浸潤能を促進する事を明らかにした。これらの検討結果を"Hypoxia-Induced CD36 Expression in Gastric Cancer Cells Promotes Peritoneal Metastasis via Fatty Acid Uptake"としてAnn Surg Oncol(2023 May;30(5):3125-3136.)に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では、FFAの取り込みによる胃癌細胞の脂肪酸β酸化、細胞内代謝の詳細は検討できていない。本年度は胃癌細胞のFFAの取り込みによるFAOとミトコンドリア内の酸化的リン酸化の状況を低酸素や脂肪酸負荷などの各種条件でflux analyzerを用いてOCR, ECARを測定し評価する予定である。また酸化的リン酸化に伴うROSの蓄積と細胞障害に対する回避機構をCD36陽性胃癌細胞のシスチントランスポーターに着目して明らかにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ渦による影響で研究時間が十分に確保できなかったため研究期間の延長を申請した
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