研究課題/領域番号 |
19K09167
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
菊池 寛利 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (70397389)
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研究分担者 |
竹内 裕也 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20265838)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 循環腫瘍細胞 / 定量位相顕微鏡 / negative selection / 人工知能 / 画像認証 |
研究実績の概要 |
血中循環腫瘍細胞(circulating tumor cells : CTC)は腫瘍から遊離し血中へ浸潤した癌細胞であり癌の転移に関わるとされるが、その検出は困難であり様々な手法が試されている。既存のCTC検出方法の多くは上皮系細胞表面マーカーに依存しているが、上皮間葉転換を起こした浸潤性が強く悪性度の高い細胞集団は上皮系マーカーが消失しているため、従来の手法では検出できない。一方、末梢血液中を循環する有核細胞の殆どは白血球であるため、白血球を除去することによって幅広くCTCを回収できる(negative selection)。本研究は、非染色下に数ナノメートルの解像度で細胞を観察することができる定量位相顕微鏡と人工知能(AI)を用いた画像診断技術を利用し、細胞表面マーカー非依存的なnegative selectionによる、全く新しいCTC検出方法の開発および臨床応用を目的とする。 これまでの研究開発によって、定量位相顕微鏡を用いた2次元像位相イメージングフローサイトメーターによる「細胞を流す」⇒「細胞を撮影」を実現し、さらに高分解能解析を可能とする3次元像位相イメージングフローサイトメーターの研究開発を行ってきた。2019年度は、健常人20名20検体および消化器癌患者10名21検体の末梢血液中から有核細胞を抽出した後、2次元像位相イメージングフローサイトメーターによって流路内で細胞を観察した。得られた定量位相顕微鏡画像の解像度を、新たな画像処理法により向上させた後に、AIによる画像認証システムで解析し、白血球と非白血球の識別を行った。非白血球と識別された有核細胞はCTC候補として記録保存し、今後の検討に備えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目標は、高分解能解析を可能とする3次元像位相イメージングフローサイトメーターによるCTC検出方法の開発および臨床応用であるが、この実現のためには基本技術となる2次元像位相イメージングフローサイトメーターの測定精度向上が必要である。2019年度は、2次元像位相イメージングフローサイトメーターによる測定画像の精度向上を、新たな画像処理法により達成できた。次年度以降の研究における問題点を克服する上でも、有用な結果であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き2次元像および3次元像の位相イメージングフローサイトメーターを用いて健常人および消化器癌患者の末梢血観察を行い、得られた定量位相顕微鏡画像をAIによる画像認証システムで解析し、非白血球として識別された細胞群をCTC候補として記録していく。このCTC候補には、上皮細胞の表面マーカー依存的な従来法でも検出可能な既存CTCと、従来法では検出不能な上皮マーカー陰性の新規CTCが混在していると考えられる。そこで、CTC候補を3次元像位相イメージングフローサイトメーターでより詳細に観察することにより、高詳細な微細構造の情報に基づいたCTC候補の細分類化を試みる。さらに、測定結果と臨床データをリンクさせたデータベースの構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は概ね計画通り進展しているが、研究計画の一部を次年度に行う必要が生じた。また、年度内に獲得した別資金により購入した機器を共有して使用することなどにより、研究費の一部を節約できた。次年度の研究計画を修正し、繰り越し金を用いて研究をより発展させる予定である。
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