研究課題/領域番号 |
19K09174
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
黒田 慎太郎 広島大学, 病院(医), 助教 (30457246)
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研究分担者 |
田代 裕尊 独立行政法人国立病院機構(呉医療センター臨床研究部), その他部局等, その他 (90359894)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脂肪肝 / 肝虚血再灌流障害 / トロンボモジュリン / トロンボモジュリンノックアウトマウス / HMGB1 |
研究実績の概要 |
脂肪肝は正常肝に比べ虚血再潅流障害(IR)を受けやすく、IR後に肝内再発を来しやすい。われわれはこれまで、マウス脂肪肝のIRモデルにおいて、可溶性トロンボモジュリン製剤(rTM)が肝障害を軽減しIR後の肝内再発を抑制できるかを検討している。 マウス脂肪肝モデル(NASH)について、肝に発現するトロンボモジュリン(TM)を免染で確認し、Wildと比較しNASHではTMの発現が低下していた。また、NASHでは肝のピモニダゾールの蓄積、HIF1αの発現の亢進を認め、定常より低酸素障害を受けていることが確認できた。 これまで、in vivo実験系において、NASHでIRモデルを作成し、rTMを投与(IR+rTM群)、Wild、NASHでrTM投与による肝障害の改善を認めた。NASHに注目し血清HMGB1を測定したところ、術後に有意に上昇していた。rTMのHMGB1吸着効果による肝障害抑制効果を検証するため、D1ドメイン投与群(IR+rTM-D1群)で検証し、同様に肝障害の改善を認めた。このことから、rTM-D1によるHMGB1吸着効果はIRを改善することが示唆された。更に、同様の内容を作成したTMノックアウトマウスで確認し、IRへのTMの関与を証明した。 癌生着実験では、NASH+IRモデルの術前に癌細胞を投与するモデル(がん+IR群)と、術前1回、術後1週間にrTM 6mg/ml投与するモデル(がん+IR+rTM群)を作成した。実験結果では、Wildと比較しNASHではがん+IR群で癌生着による肝重量と腫瘍占拠率の増加を認め、rTM投与群で低下を認めた。腫瘍増殖とHMGB1の関連性を検討するため、血清HMGB1を検討したところ、がん+IR+rTM群で有意な低下を認めた。rTM-D1によっても同様の内容を証明し、TMの中でもD1ドメインによるHMGB1吸着による腫瘍縮小効果が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vivoの実験系に関しては、TMノックアウトマウスを実験に使用開始し、予想以上に進捗している。in vitroに関しても、順次、結果を出していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
TMノックアウトマウスの使用による、肝虚血再灌流モデルの作成、癌生着実験が着実に進捗した。In vitroでは、ヒト類洞内皮細胞のTMの発現量を変化させ、接着能を検証する。癌の生着以外にも、発癌モデル、肝再生モデル等、期間内に確認すべき項目に着手していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナウイルス感染症の拡がりに対応するため、実験体制の確立に時間を要した。以前と比較し、小規模ではあるが、継続的に実験を行っていく予定である。使用計画としては、主に実験用動物の使用に用いる予定である。
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