脂肪肝は正常肝に比べ虚血再潅流障害(IR)を受けやすく、IR後に肝内再発を来しやすい。われわれはこれまで、癌とトロンボモジュリン(TM)との関連に着目し、特にTMの減少する脂肪肝IRモデルにおいて、癌が進展するメカニズムを研究してきた。また、マウス脂肪肝IRモデルにおいて、可溶性TM製剤(rTM)が肝障害を軽減しIR後の肝内再発を抑制できるかを検討してきた。 今回、Wildマウス、TMノックアウトマウスを用いて、食餌性脂肪肝モデルマウスを作成し、癌生着の実験を行った。それぞれのモデルマウスの、トロンボモジュリン活性を間接的に評価する目的で、血清プロテインCの活性度を測定したところ、脂肪肝マウスは正常肝マウスに比べ、約50%の活性と有意に低下していた(P<0.01)。また、TMノックアウトマウスは正常肝マウスに比べ約25%(P<0.01)、更に脂肪肝TMノックアウトマウスでは15%(P<0.01)とそれぞれ有意に低下していた。 これらのモデルマウスに対して、マウス肝癌細胞株を脾臓注射し、どの程度、肝臓に生着するかを観察した。また、それぞれのモデルにおいて、IRを加えた後に、同様にマウス肝癌細胞株を脾臓注射し、肝臓への生着を観察した。TMノックアウトマウスにおいては、IR後に約5倍の癌の生着を認め(P<0.01)、TMの欠損により癌の生着が助長されることが示された。また、同様に、肝重量および腫瘍占拠面積の増加を認められた。更に、治療薬としてrTMを投与することにより、癌の生着率が抑制され、更に3週間後の生存率が45%から100%に有意に改善され(P<0.01)、癌の進展の抑制並びに肝障害の改善などの要因が考えられた。rTMで肝重量および腫瘍占拠面積が低下した。
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