研究課題/領域番号 |
19K09175
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宮坂 義浩 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40507795)
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研究分担者 |
寅田 信博 九州大学, 大学病院, 臨床検査技師 (00398075)
森山 大樹 九州大学, 大学病院, 准教授 (70586859)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膵癌 / desmoplasia / 免疫細胞 |
研究実績の概要 |
膵癌は組織学的にdesmoplasiaと呼ばれる過剰な間質増生を特徴としている。膵癌間質は組織圧が高く乏血性でかつ細胞外基質が豊富なため薬剤送達効率が低く、治療抵抗性の一因となっている。しかし、薬剤送達効率の悪い膵癌間質においても免疫細胞は豊富に存在する。本研究ではこの膵癌間質に豊富に存在する免疫細胞を膵癌治療薬のキャリアとする新たなDrug delivery system (DDS)を開発することで薬剤送達効率を向上させ、安全かつ効率的な膵癌の治療効果を開発することを目的とする。 本年度は、膵癌間質中の免疫細胞の中でも好中球に着目して研究を行った。好中球が固形癌の転移を促進する機構の一つとして、好中球の生体防御反応である好中球細胞外トラップ(NETs)が知られている。我々は膵癌転移巣においてもNETsが促進的に働くという仮説を立てた。まず、GFPを導入した膵癌細胞を脾臓に注入する肝転移モデルマウスを用いて、転移巣で誘導される好中球及び癌関連線維芽細胞(CAF)を免疫染色で確認した。癌細胞注入後1日目から微小転移巣に好中球の集簇がみられ、それに引き続いて,αSMA陽性のCAFは2日目以降に集簇が認められた。In vitroでは膵癌細胞と間接共培養することにより好中球細胞外トラップ(NETs)の形成が促進された。これより、膵癌において好中球のもつ生体防御反応であるNETsがCAFの誘導を促進し、肝転移形成を促進することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は膵癌転移巣における免疫細胞の中でも好中球に着目して研究を行い、好中球の細胞捕捉機構が肝転移形成に関与している可能性が示唆された。一方で、癌組織特異的な免疫細胞のpopulationの解析や、免疫細胞に親和性を持つナノ粒子の作成については検討が行えておらず、達成度はやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
膵癌組織特異的に誘導される免疫細胞の同定:炎症性膵疾患及び膵癌のヒト組織を用いた免疫染色、さらにはsingle cell RNA sequenceの技術を用いて特徴的な細胞亜集団の同定、および発現変動遺伝子の抽出を行う。 免疫細胞をキャリアとするナノ粒子の開発:目的の免疫細胞が同定できれば、その表面マーカーに対する抗体やリガンドをナノ粒子表面に結合させ、目的の薬剤を癌微小環境中に送達しうるナノ粒子の開発を進める。また、ナノ粒子の薬物動態の解析を、膵癌同所移植マウスモデルや、ヒト膵癌と類似した組織型をとる膵癌自然発癌マウスを用いて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
免疫細胞のpopulationの解析や、免疫細胞に親和性を持つナノ粒子の作成についての検討が行えてのおらず、研究計画にやや遅れを生じているため。 次年度はナノ粒子の開発のための研究用試薬、器材の消耗品や受託解析に使用する予定である。
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