研究課題/領域番号 |
19K09178
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
七島 篤志 宮崎大学, 医学部, 教授 (60380838)
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研究分担者 |
菱川 善隆 宮崎大学, 医学部, 教授 (60304276)
松本 仁 宮崎大学, 工学部, 准教授 (90363572)
徐 岩 宮崎大学, 医学部, 教授 (40506763)
横谷 篤至 宮崎大学, 工学部, 教授 (00183989)
山口 優也 東邦大学, 医学部, 助教 (60779966)
池ノ上 実 宮崎大学, 医学部, 助教 (40612370)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光線力学的療法 / 胆管癌 / 水溶性光増感剤 / 腫瘍集積性 / light emitted diode / 細胞内局在と細胞死機序 / ポルフィリン誘導体 / 細胞増殖阻止 |
研究実績の概要 |
難治性消化器癌の胆管癌における高い局所病態制御を達成する為、新規水溶性光増感剤 (PS)ポルフィリン誘導体と光励起light emitted diode (LED)を開発し次世代の光線力学的療法 photodynamic therapy (PDT)の橋渡しを行う目的に基づき、平成31年(3年間の初年)度の実施計画を策定した。 1.細胞により取り込まれる水溶性PSの分子設計と合成:1)親水基、脂溶性向上のための疎水基の最適化、多糖類や糖鎖結合したPS合成とトランスポーターとの相互作用検討、癌表面糖鎖と結合性の高い化合物合成を行う。2) PSの溶解性、可視光吸収・蛍光および酸化還元特性を調べ一重項酸素の生成量子収率を決定する計画を定めた。そこで工学部の分担研究者により、得られた化合物の,溶解性,可視光吸収・蛍光・酸化還元特性,一重項酸素の生成量子吸収率を評価し、生体親和性に関わる親水性及び脂溶性の最適化を行い,最適な吸収波長が得られる水素化ポルフィリン骨格の合成を試みた。2.水溶性PSの癌細胞親和性解析と毒性評価:1) 胆管癌由来細胞株NOZ細胞(対照:正常線維芽細胞、子宮頸癌扁平上皮細胞)の確立、2)細胞内局在観察、3)細胞毒性(安全性)評価、4)蓄積量評価、5) 光波長変換が可能なLED光源ならびに癌局在診断検出器開発 を計画した。そこでNOZ 細胞及び追加して数種類の癌細胞株を対象に,in vitro条件下に水溶性ポルフィリン化合物を癌培養細胞に投与し,細胞内への蓄積と蓄積部位を組織選択性の蛍光プローブでの二重蛍光染色で確認し,蓄積量を細胞の顕微分光法・細胞から抽出による定量で評価した。光源は工学部の分担研究者により最適な波長のLED 可視光線を使用して、癌細胞活性の評価には,癌細胞 viability 測定,アポトーシスの解析,細胞増殖活性の解析での評価を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に作成した水溶性ポルフィリン錯体の中で糖鎖としてグルコースをリンポルフィリン錯体の軸配位子に直結させた。4種類のグルコース連結のポルフィリン錯体を合成し、一つで既知のtalaporfin Na(レザフィリン)と同程度のPDT活性(IC50)を得た。LED光源装置は645nm吸収波長の長波長化を達成し、銅板を用いて均一に照射できるよう装置を開発し36度30分間照射できる条件を確保した。水素化反応を行いNOZ 細胞及び他の数種類の癌細胞株を対象としたミトコンドリアでの集積性の評価を行い、錯体への糖の連結方法の差が癌細胞の集積性に及ぼす影響を確認した。アポトーシスに関連するBax/Bcl-xL比の変化によるミトコンドリアpathwayが本光増感剤によるPPP-PDTの殺細胞効果に重要な機序であることを推測した。
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今後の研究の推進方策 |
令和2~3年(3年間の2-3年)の計画にのっとりすすめる。課題として現在の光増感剤では既知の薬剤と同程度のIC50しか効果がなく、その解決のために、糖鎖連結水溶性ポルフィリン錯体は1)錯体のスペーサーの長さを増やし、2)軸配位子の片方に糖鎖を連結させ効果の増強を図、3)糖鎖のスペーサーを3種類変えてin vitroでPDT活性を再評価する。より正常細胞に安全性の高い長波長を確保するために610 nmでPDT活性を有する錯体について、水素化ポルフィリン錯体へ変換し、660 nmあるいは750 nmのLEDランプを用いたPDT活性 評価を検討する。In vitro研究に終始しており、現在のグルコース連結ポルフィリン錯体によるin vivoの評価を行う。アポトーシス誘導に必要なCaspase-3の発現が不顕性で、殺細胞機序解明として脚光をあびている細胞死ネ、クロプトーシスの確認を推進する。将来の医療機器開発を視野に入れて、光源装置のLED照射装置の小型化、内視鏡鉗子孔を通るカテーテル化の開発を促進する。
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