研究課題/領域番号 |
19K09179
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
木村 康利 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (80311893)
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研究分担者 |
今村 将史 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00404608)
永山 稔 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40398326)
山口 洋志 札幌医科大学, 医学部, 診療医 (80457704)
竹政 伊知朗 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50379252)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膵癌 / ctDNA / リキッドバイオプシー / モニタリング / actionable mutation |
研究実績の概要 |
膵癌患者における血漿中circulating tumor DNA (以下ctDNA)をモニタリングすることにより、術後再発または化学療法不応の早期診断と同時に、治療につながるactionable mutation (AM)を特定できる可能性が期待される。そこで、膵癌患者におけるctDNAの検出率および治療介入による変化を観察しバイオマーカーとしての有用性を探索した。 2019年5月より膵癌と診断され、研究参加の同意が得られた58例を対象にNGSとOncomine PanCancer遺伝子パネルにより52遺伝子の変異を解析した。 検体採取は治療介入前および介入後2~4週毎とし、手術または化学療法にともなうctDNAをモニタリングした。AMをOncoKB分類の変異Level 1-4に従い定義した。 これまでに分析された58症例中、初回検体における全ctDNA検出は81%(47/58例)、SNVおよびCNVが17遺伝子に検出され、TP53(53%)、KRAS(29%)、SMAD4(7%)などが該当した。MAF(mutant allele frequency)は臨床病期I-IIと比較してIII-IVで有意に増加したが(p = 0.0005)、病期によるctDNA検出率に差はなかった。術後MAF(n = 29)は31%(9/29例)で減少し、完全消失は34%(10/29例)であり、手術後2~4週間で34%(10/29例)が増加した。観察期間12.1ヶ月(3.2-16.9)において8例(HEP 6、LYM 1、PER 1)が再発し、3例では臨床画像覚知前に4変異アレルが検出された。全検体の45%にAM (OncoKB levels 1-3B+R1)が観察された。 ctDNAは膵癌治療における根治術後の最小残存腫瘍細胞、または薬物療法奏功性のバイオマーカーとなり得る可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「Liquid biopsy によるActionable gene mutation 検索」として札幌医科大学附属病院臨床研究審査委員会に承認され(2019/4/26)、症例登録を開始した。 2021/3/30現在、146例(うち、膵癌88例)を登録し、末梢血864検体を採取した。これらは当院臨床検査科において血漿が分離され、(株)BML研究所においてcfDNAが調整され、がん研究会がんプレシジョン医療研究センターにおいて解析に供された。 膵癌患者の背景因子は臨床病期0-I/II/III/IV=18/35/11/24例、切除可能性分類R/BR/URLA/URM=38/15/10/25例、腫瘍マーカーCA19-9は58.8 U/mL(中央値, 3.8-65507)であった。治療内容は、化学療法45例、放射線化学療法2例、BSC1例、根治切除40例となっている。症例集積は平均12例/月、55サンプル/月が登録されたが、倫理審査書類の調整に期日を要し2020年4月以降の集積は中止している。本年4月に再開予定である。観察期間(平均的19ヶ月)内の腫瘍関連イベント(再発/死亡/化学療法不応など)発生が低率にとどまっており、症例集積と合わせて更なる追跡を継続する。
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今後の研究の推進方策 |
登録症例のさらなる集積を要する。その理由は、切除症例が40例と未だ少数にとどまっていることがあげられる。膵癌は、診断時に大多数が手術対象とならない進行状態で発見されることから、非切除症例の全身化学療法や放射線化学療法の治療経過とリキッドバイオプシーによる治療効果のモニタリングも有用な可能性がある。本研究では、根治切除後の再発を超早期に診断することを目的としており、切除症例の増加を企図した新規症例のリクルートは必須である他、切除後経過観察中の血液検体採取が良好なコンプライアンスにより実施されなければならない。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に予定していた計画のうち、以下が未実施となっており次年度への持ち越し課題となる。1. 未解析サンプル分、2. 細胞実験の本格実施、3. 病変組織を用いた免疫組織科学的検討、である。さらには、全世界的なパンデミックの影響により学会参加と会議出張に伴う経費が余剰した。これを有効活用すべく次年度にはActionable変異の機能解析からゲノム創薬への橋渡しに関してパイロット実験を稼働させる。
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