研究課題/領域番号 |
19K09179
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
木村 康利 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (80311893)
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研究分担者 |
今村 将史 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00404608)
永山 稔 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40398326)
山口 洋志 札幌医科大学, 医学部, 診療医 (80457704)
竹政 伊知朗 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50379252)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 膵癌 / リキッドバイオプシー / 術後再発 / ctDNA / ゲノム異常 / 微小残存病変 |
研究実績の概要 |
2019年5月より2020年3月までに膵がんと診断され、研究参加の同意が得られた88例を登録した。 膵癌組織が採取された70例を対象にリキッドバイオプシー解析結果と腫瘍ゲノムプロファイリングを比較検討した。Ampliseq Comprehensive cancer panel (CCP : 409 genes)、ddPCR (KRAS G12/G13 screening kit : G12A,C,D,R,S,V,13D+KRAS Q61 screening kit : Q61H,K,L,R)にて腫瘍組織ゲノムを解析したところ、70例中69例 (98.6%) で少なくとも1つのOncomine Pan-cancer cell-free assayでモニタリング可能な変異が検出された。70例中67例(95.7%)でKRAS変異が検出され、次いでTP53(29例、41.4%)、SMAD4(3例、4.3%)、BRAF(2例、2.9%)、GNAS(2例、2.9%)、CTNNB1(1例、1.4%)であった。腫瘍情報に基づいたリキッドバイオプシーの変異プロファイルは、64例中24例 (37.5%)で少なくとも1つの変異が検出された。治療介入前(術前化学療法前、術前化学療法後)の症例では34例中19例 (55.9%)に少なくとも1つの変異が検出された。興味深いことに、腫瘍組織のみ、血液検体のみに各々変異を認める症例が予想以上に多く、特に血液のみに変異を同定された症例は11例(17.2%)にのぼった。術後再発モニタリングについては53例中3例(5.6%)で術後初回サンプルから微小残存病変が検出され、それらの3例は全例が再発した(中央値 12か月、4-14か月)。 ctDNAは膵癌治療における根治術後の最小残存腫瘍細胞、または薬物療法奏功性のバイオマーカーとなり得る可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「Liquid biopsy によるActionable gene mutation 検索」として札幌医科大学附属病院臨床研究審査委員会に承認され(2019/4/26)、症例登録を開始し2020/3/30までに、146例(うち、膵癌88例)を登録し、末梢血864検体を採取した。これらは当院臨床検査科において血漿が分離され、(株)BML研究所においてcfDNAが調整され、がん研究会がんプレシジョン医療研究センターにおいて解析に供された。 膵癌患者の背景因子は臨床病期0-I/II/III/IV=18/35/11/24例、切除可能性分類R/BR/URLA/URM=38/15/10/25例、腫瘍マーカーCA19-9は58.8 U/mL(中央値, 3.8-65507)であった。治療内容は、化学療法45例、放射線化学療法2例、BSC1例、根治切除40例となっている。症例集積は平均12例/月、55サンプル/月が登録された。 研究計画の変更(登録症例数増)に伴い倫理審査に期日を要し2021年11月から集積を再開した。2022年3月までに74例を追加登録し、それらのうちの膵癌は48例となっている。
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今後の研究の推進方策 |
登録症例のさらなる集積と微小残存病変のモニタリング結果を術後再発イベントと合わせて解析する。 膵癌は、診断時に大多数が手術対象とならない進行状態で発見されることから、非切除症例の全身化学療法や放射線化学療法の治療経過とリキッドバイオプシーによる治療効果のモニタリングも有用な可能性がある。本研究では、根治切除後の再発を超早期に診断することを目的としており、切除症例の増加を企図した新規症例のリクルートは必須である他、切除後経過観察中の血液検体採取が良好なコンプライアンスにより実施されなければならない。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に予定していた計画のうち、以下が未実施となっており次年度への持ち越し課題となる。1. 未解析血液サンプル分、2.病変組織を用いたゲノムプロファイリング完了、である。さらには、全世界的なパンデミックの影響により学会参加と会議出張に伴う経費が余剰した。これを有効活用すべく次年度 にはActionable変異の機能解析からゲノム創薬への橋渡しに関してパイロット実験を稼働させる。
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