研究実績の概要 |
2019年5月より2021年9月までに膵管癌にて根治切除が行われた145例を解析した。対象症例の性別(男女)は75/70例、年齢71歳(中央値)、腫瘍局在(Ph/b/t)は 99/36/10例であった。血漿は未治療群71名 (手術先行+NAT前)とNAT後74名から採取した。ゲノムプロファイリングにはNGSとddPCRを用いた。1) 切除標本の腫瘍 情報に基づくアプローチ (tumor-informed approach, TIA; 腫瘍と一致する低頻度変異を陽性と扱う)によるctDNA検出率、2) 術前後ctDNAと臨床病理学的因子、 腫瘍学的転帰を検討した。 結果 1) 腫瘍組織における体細胞変異を85% (123/145例)に認め、TIAによりctDNA検出率は未治療群56% (40/71)、NAT後群36% (27/74)と有意に向上した (p= 0.0165)。2) pM1 (n=10)症例においてctDNAを高率に検出した (p=0.026)が、pTN, pStageに差はなかった。腫瘍と一致する術前ctDNA陽性例のRFSは有意に短縮し た (13.4ヶ月 vs. 未到達, p=0.001)。術後100例のモニタリングマーカー (25遺伝子, 230変異)を監視し、40例にKRAS (26例/26変異)、TP53 (16 /18)、GNAS (2/2)、EGFR、FGFR3、SMAD4、SMO (それぞれ1/1)が陽性となり(重複あり)、53例が再発した。術後ctDNA陽性例は陰性に比較して高率に再発し (35/40 vs. 18/60 例, p<0.001)、RFSは有意に短縮した (9.8ヶ月 vs. 未到達, p<0.0001)。 膵癌のctDNAは、腫瘍情報ににより検出率が向上し、診断時予後不良と、術後再発のバイオマーカーとなる可能性が示唆された。
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