研究課題
本研究課題は、個々の大腸癌を癌間質特性に基づいて亜分類し、腫瘍微小環境特性に応じた個別化標的治療の可能性に迫るものである。トランスクリプトミクスの応用による間質特異的・細胞特異的な解析と、免疫組織学的検証、癌細胞・間質細胞共培養などの手法を組み合わせることで、腫瘍微小機構を評価する独自の間質プロファイリング手法を確立し、複数の独立した大腸癌コホートに適用する。癌ゲノム・癌間質トランスクリプトームを応用した大腸癌治療の個別化に貢献するものと考えている。大腸癌組織(マクロダイセクション)の解析に加え、レーザーマイクロダイセクションによる間質特異的解析、フローサイトメトリーを用いた細胞特異的解析、シングルセル解析などに基づく各種高スループットデータを複合的に応用している。マイクロアレイやRNAシークエンスデータを用いたうえで、さらに得られた間質特異的分子を免疫染色を用いて組織切片上で検出することで、より簡易かつ日常診療に応用可能間質サブタイピングを想定している。種々の解析から大腸癌間質におけるTGFβシグナル活性化に着目するに至っている。
2: おおむね順調に進展している
複数の大腸癌コホート、プラットフォームを用いたマクロ・マイクロダイセクション解析、細胞特的解析、シングルセル解析などが効率的に展開しており、癌の腫瘍・免疫微小環境を評価するための免疫染色が進行し臨床的検討を開始できている。
ゲノムデータとの関連付け、機能的意義、免疫学的微小環境の制御機構への展開など種々の解析プラットフォームを活用した研究を予定している。特に微小環境を用いた大腸癌のサブタイピング確立を試みる。
当研究室において本研究テーマに関連した実験系は以前から取り組んでおり、本研究に応用するにあたっては一般試薬、抗体などがある程度研究室内に揃っており、本研究の予備実験段階においては新規の購入に対する物品費が生じにくかったこと、また当該年度はPC上での網羅的データ解析作業・候補の抽出が主体であったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は細胞実験や臨床サンプル処理のための各種物品費に充当する。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)
Molecular Cancer Research
巻: 18 ページ: 1402~1413
10.1158/1541-7786.MCR-20-0308
Carcinogenesis
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