研究実績の概要 |
昨年度と同様、PDOを樹立する方針を継続した。50症例の膵癌患者から35系統のPDOの樹立に成功した。樹立した膵癌PDOのついて、オリジナル(移植元)膵癌組織について遺伝子変異解析(全エクソン解析)が実施されているもののうち、SMAD4変異陽性症例、陰性症例を抽出し、全4系統のPDOに対し、RNAseqとsingle-cell RNAseqを実施した。今後はこれらのPDOを免疫不全マウスに移植し、阻害薬を使った治療実験を計画している。
昨年度、膵癌PDXのRNA seqデータを用いて膵癌早期再発群の発現変動遺伝子群(DEGs)を同定し、TGFβ, SMADとの関連が報告されているNFAT familyが膵癌の早期再発に関与していることが示唆された。本年度は膵癌病理組織検体165例を用いてNFAT family の膵癌組織での発現と臨床病理学的因子について免疫組織化学を用いて検討し、NFAT5発現とVenous invasionとの相関を認めた(p=0.0473)。また、NFAT1、NFAT5の発現と予後(Overall survival:OS)との相関については有意差を認めなかったが、NFAT1/NFAT5 co-expressionは有意な予後不良因子であった(p<0.01)。さらにPost recurrence survival(PRS)についても検討し、NFAT1/NFAT5 共発現が有意な予後不良因子であった(p<0.01)。多変量解析でもOS、PRSに関し、NFAT1/NFAT5 共発現が独立した予後不良因子として選択され(p<0.01, p<0.01)、NFAT1/NFAT5の共発現はEMTなどの機序を介して化学療法に抵抗し、早期再発と予後不良につながっている可能性が考えられた。(2022年日本外科学会、ASCO-GIにて発表)。
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