研究課題/領域番号 |
19K09189
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
播本 憲史 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (00419582)
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研究分担者 |
五十嵐 隆通 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (20648472)
新木 健一郎 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (60431706)
渡辺 亮 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (60738847)
調 憲 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70264025)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肝再生 / 肝臓外科 |
研究実績の概要 |
本研究は、M2BPGiの肝再生における役割を検討し、M2BPGiを介した新たな肝再生の分子機序を明らかにすることである。肝線維化マーカーとして発見されたM2BPGiは、①肝の星細胞が産生し、肝星細胞の活性化マーカーであること、②M2BPGiはKupffer細胞のMac-2(galaectin3)を誘導し、Kupffer細胞はMac2依存性に肝星細胞を活性化することが明らかとなった。これまでに、M2BPGiを添加したKupffer細胞の上清中から質量分析計を用いて、目的とする蛋白(ProteinX)を同定し、Western blot法とELISA法で確認している。当初の計画通りに、今年度はヒト肝細胞(PBX cell、フェニックスバイオ社)のBrdu取り込みに与える影響を検討したところ、Protein Xは、ヒト肝細胞のBrdUの取り込みを促進した。マウス70%肝切除モデルにおいて、、Protein Xは術後3日目がピークとなり測定が可能であった。発現部位の確認の免疫染色を行ったところ、術後1日目においてクッパー細胞にProtein Xの発現を認めた。マウス70%肝切除術施行後、腹腔内にmouse Protein Xを100ng/gの容量で単回投与したところ、コントロール群に比べ、肝再生率が有意に上昇しPOD1,2いずれでもBrdUの取り込みの促進を認めた。上記の内容は2019年11月高地で開催された第81回日本臨床外科学会総会のシンポジウム17で発表した。またコロナの影響のため今年4月から8月に開催が延期となった第120回日本外科学会定期学術集会にても発表予定である。 我々が予想したように肝星細胞から分泌されるProtein Xはあらたな肝再生因子と思われ、今後の研究成果に期待が持たれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.In vitroにおいてヒト肝細胞(PBX cell、フェニックスバイオ社)のBrdu取り込みに与える影響を検討したところ、Protein Xは、ヒト肝細胞のBrdUの取り込みを促進した。 2.C57BL/6マウスを用いた70%肝切除モデルにおいて、経時的に犠死させ、血清中のプロテインXの動態をELISA法にて明らかにした。術後3時間で検出され、術後12時間で血中濃度ピークとなり、術後3日目まで測定が可能であった。Mouse Protein X Antibody用いて70%肝切除術後の残肝組織に対して免疫染色を行ったところ、コントロールおよび術後7日目の肝臓ではほとんどProtein Xの発現を認めなかったが、術後1日目においてクッパー細胞にProtein Xの発現を認めた。 3.10週齢C57BL/6マウスを用いた70%肝切除術施行後、腹腔内にmouse Protein X recombinant proteinを100ng/gの容量で単回投与し肝再生に与える影響について検討した。Protein X 単回投与にて、コントロール群に比べ、肝再生率が有意に上昇した。さらに、Protein X 単回投与にて、コントロール群に比べPOD1,2いずれでもBrdUの取り込みの促進を認めた。 現在、生存率が不良とされる90%肝切除においてProtein Xを投与し、生存率の向上の効果を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、生存率が不良とされる90%肝切除においてProtein Xを投与し、生存率の向上の効果を検討中であるが、より高い肝再生率を確立するために持続投与や投与量について比較検討する。Protein X投与あるいはコントロール群のマウス70%肝切除モデルの肝標本があるため、肝再生にかかわる様々なシグナル伝達蛋白(Jak/STAT3およびPI3-K/PDK経路)について免疫組織化学染色を行い、Protein X投与群とコントロール群を比較する。 また現在クッパ―細胞からProtein Xが分泌されているが、クッパ―細胞を抑制した際のProteinXの発現量、70%肝切除モデルにおける肝再生率の変化について検討する。 さらに、その後の計画として、すでに群馬大学のバイオバンクに採取・保存されている血清を用いて、ヒト肝切除の周術期におけるプロテインXの動態を検討し、最終的な臨床応用への基礎データとする。
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