光線力学的療法(PDT)は、腫瘍親和性のある光感受性物質を投与し腫瘍にレーザー光を照射することで光化学反応を引き起こし、一重項酸素(活性酸素の一種)の酸化作用により実現される。PDTは、照射部位だけに高い抗腫瘍効果を示す局所治療のため侵襲が少なく機能温存が期待される。 本研究では光感受性物質であるインドシアニングリーン(ICG)を用い、新規に開発した大腸癌細胞株肝転移マウスモデルにおいて近赤外レーザー光(NIR)ICG、PDT効果について検討した。これは、転移性肝がんにおいて正常背景肝の転移性肝がんの周囲にICGが特異的に取り込まれることがすでに報告されている。今回新規に肝転移マウスモデルを開発した。大腸がん細胞を同マウス脾臓に直接投与することで肝転移巣を発生させ、その接種量と接種から転移巣を確認するまでの期間と共に安定したモデルを開発し生産することに成功した。これは本研究による成果の一つである。 さらに、本研究による成果の二つ目である、同モデルに対しICGを静注し肝転移巣周囲の正常肝細胞にICGを集積させることに成功した。詳しくは、肝転移モデルに大腸がん細胞を直接後、約10日前後でICG静注し、sacrificeされたマウスにおいて適切な大きさの肝転移巣の発生と、その周囲にICGが特異的に蓄積することが確認された。これに対し、本研究の最終目標であるPDTが成立するか確認した。詳しくは、静注後24時間経過後に NIR照射し3から4日後に確認する。NIRを照射する位置はラット右肋間辺りから肝右葉に見られる発光をターゲットにする。病理学的解析では、ICGを照射した場合、周囲の肝細胞はアポトーシスを起こしていた。一方、現時点では癌細胞自体にアポトーシスを起こしている所見が得られていない。NIR装置の高出力化と照射時間延長が課題である。
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