研究課題/領域番号 |
19K09193
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
五井 孝憲 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (60225638)
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研究分担者 |
山口 明夫 福井医療大学, 保健医療学部, 学長 (10174608)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 血管新生増殖因子 / PROK1 / 抗体 / 肝転移 |
研究実績の概要 |
本邦において、がん(悪性腫瘍)は1981年以降、死亡原因の第1位となっており、今後も増加を辿ることが予測されている。そのうちで大腸癌の罹患者数は、この35年間に5倍以上に増加し、また死亡者数も、過去20 年間において2.5 倍に増加、女性で第一位、男性で第三位の位置を占めている。この大腸癌は肝転移、肺転移などの血行性転移をきたしやすく、その克服が生存率の向上の最大の鍵と考えられている。 私どもは、ヒト大腸癌とPROK1遺伝子の関連性を検討し、世界に先駆けて特に基礎系・臨床系の研究において、大腸癌細胞の浸潤能の亢進作用や癌周囲の間質組織において血管新生を促進し、血行性転移に重要な役割を示すことを報告しており、今回は、抗PROK1抗体を作製して、ひいては大腸癌に対する新規治療法の確立、新薬剤の開発へ導いていくことを目的としている。 本年の結果としまして、マウスの脾臓に高PROK1蛋白質発現型大腸癌細胞株3種類を移植後、抗PROK1抗体を腹腔内に投与したところ、①いずれの細胞株においても、肝転移が抗体を投与しない場合と比較して有意に肝転移の発生が抑制された。②また肝転移を生じた細胞について増殖率の検討をおこなったところ、抗体投与細胞では増殖率が低下していた。③さらに生存期間も有意に延長することが認められた。 現在、如何なる細胞内シグナル伝達機構に関与を及ぼしているのか、検討にとりかかっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
主目標であった、マウスに高PROK1蛋白質発現型大腸癌細胞株(脾臓移植)投与による肝転移の発生が、PROK1に対する抗体によって抑えられる結果が見出され、さらにマウスの生存率の延長も認められ、非常に有意義な結果が得られている。
研究結果から得られた新規事項に関しては、既に特許の申請も終了し、結果待ちとなっている。また論文も作成し、投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
PROK1に対する抗体が、マウスにおいて大腸癌の肝転移の抑制作用を有すること、さらには生存期間が延長することまで確認され、意義ある結果が得られている。 今後さらに、抗体による細胞内作用機序やシグナル伝達系のメカニズムを明らかにしていくことを考えている。特に細胞増殖、細胞浸潤に関連するDNA array、パスウエイ array、リン酸化タンパク質array染色にて網羅的に解析を行い、その中から重要なシグナル伝達系を明らかにしていく。 また現在、明確な治療法が確立されていない難治性の病態である腹膜播種に対して、マウスに対して腹膜播種モデルを作成し、同様に本抗体を経静脈投与ならびに腹腔内投与にて増殖抑制や生存率の向上に働く可能性を検討していく。さらに細胞内での作用機序の検討や重要なシグナル伝達系を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が計画通りに進まなかった場合の予備として、試薬等の消耗品費を計上していたが、研究が順調に進行しているので次年度使用額が生じた。 次年度も免疫組織染色や蛋白質抽出に試薬やキットが必要となるので、それらに充てたいと考えている。
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