研究課題
膵癌予後不良の原因として、組織への癌浸潤と強い転移能が考えられる。これは膵臓の外科的切除症例についても当てはまり、癌の術後進行再発形態により「局所浸潤型」と「遠隔転移型」に分けられる。進行再発形式により治療法を選択する必要があるため、それを予測できるリキッドバイオプシーの確立は、重要と考えられる。担癌患者の血小板細胞内では、癌病巣や周囲環境の刺激により特異的なmRNAのスプライシングや発現が誘導されることが分かっている。Tumor-educated platelets (教育された血小板) はTEPと略され、liquid biopsyにより担癌患者の主病巣のEMT statusを予測できる可能性があるものとして注目されている。膵癌におけるTumor-educated platelets (TEP) のliquid biopsy適応可能性について検討した。Screeningコホートとして16例の膵癌症例と4例の健常者から血小板サンプルを採取し、網羅的なmRNA発現を比較した結果、両者間で発現に有意差のある12個のmRNAを抽出した。この中から、TCGAデータを用いた解析でも癌部と正常組織に発現の差があるA~Dの4種類のmRNAに注目した。切除膵癌34例からなる別のvalidationコホートでの血小板検体を用いてA~DのmRNA発現を定量解析し、臨床病理学的因子との相関を検討した結果、AのmRNA発現が、1年以内の早期遠隔再発症例で有意に高値であることが分かった。今後、追加実験を経て学会発表、論文作成を進める見込みである。