近年、CD19を標的としたキメラ抗原受容体導入T細胞輸注療法の臨床試験において、造血器腫瘍に対して既存の治療法ではなしえなかった高い奏功率を達成したことから、2017年にはCD19を標的とした2つのCAR-T細胞療法が米国FDAで承認された。しかし、固形がんに対しては完成した治療法ではない。固形がんにおいては、がん微小環境における免疫機能抑制が大きな障害になる。また、体外で増殖させたT細胞は生体内で生存・維持されにくいことが、多くのT細胞輸注療法においてその有効性を損なっている。この問題を克服するための方法として、CARのシグナル伝達部位に生存性を高めるTNFRSFに属するGITR副刺激分子由来のシグナル伝達部位を付加したCARコンストラクトが作製され、Bcl-XLの発現増強を介して生存性に寄与することが示されているが(J Immunol 2010;185:7223)、それに加えてGITRシグナルが制御性T細胞による免疫抑制に抵抗性を付与することが明らかになっている(申請者等、Cancer Res 2008;68:5948)。 本研究課題は従来報告されているものとは全く異なるnaiveCD4T同時輸注によるCAR-T輸注療法の増強法を開発し、それがどのようにしてCAR-Tの抗腫瘍機能を増強することを検討している。 ①癌胎児性抗原(CEA)陽性腫瘍を担癌したマウスモデルを用いて、GITR副刺激分子のシグナル伝達ドメインを搭載するCEA特異的zG型CAR-CD8Tの抗腫瘍機能に対する未加工のprimary CD4Tの増強作用を明らかにする。②CD4Tに由来する増強作用を発揮する責任分子(サイトカイン、細胞表面抗原)を同定する。③輸注CAR-CD8Tの質的(浸潤能、機能昂進、代謝リプログラミング)・量的(生存性、疲弊マーカーの発現低下、メモリー形質の獲得)変化を明らかにする。
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