研究課題/領域番号 |
19K09196
|
研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
小島 正継 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (10452236)
|
研究分担者 |
村田 聡 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (90239525)
下地 みゆき 滋賀医科大学, 医学部, 技術補佐員 (50796448)
目片 英治 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (80314152)
谷 眞至 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60236677)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 免疫細胞治療 / 養子免疫 / CTL / OX40 / 免疫チェックポイント阻害剤 / がん性腹水 / 腹膜播種性転移 |
研究実績の概要 |
免疫トレランスに打ち勝つ癌抗原特異的CTLを癌性腹水・胸水中の免疫細胞TALから樹立するための研究を継続した。 <マウス腹水モデルによる、TAL由来CTL細胞治療> ①HER2/neuに特異的な免疫トレランスマウスモデル(HER2/neu transgenic mouse (neu-N))を用いた。HER2/neu抗原以外には通常の免疫反応が得られ、ヒト癌患者と類似した免疫環境のマウスモデルである。neu-Nマウス の自発乳癌由来癌細胞株(NT2)をneu-Nマウスに腹腔内注し、腹膜播種性転移を作成、さらに腹膜転移由来がん細胞の腹腔内注を繰り返し、高腹膜播種形成性NT2細胞(p-NT2)を樹立した。p-NT2を用いて癌性腹水モデルを作成した。②癌性腹水からTALを採取。単核球をFicoll法で分離した。③マウスMHC-Class I 抗原提示細胞(T2-Dq細胞)に、HER2/neu の既知のMHC-class I immunodominant peptideであるRNEU420-429をpulseして、CD8+T細胞を抗原刺激し、HER2/neu特異的CTLの誘導を試みた。この時、HER2/neu抗原刺激に加えてT細胞補助刺激作用のある抗OX40抗体と免疫チェックポイント阻害作用のある抗PD-1抗体を組み合わせることにより、それぞれの単剤よりもさらに有効にHER2/neu特異的CTLが誘導できた。 次に、上記の様に樹立したTAL由来HER2/neu特異的CTLの抗腫瘍作用をin vitro imaging systemで観察した。p-NT2細胞と樹立したTAL由来CD8+T細胞をそれぞれ別の蛍光色素でラベルし、in vitroで48時間接触培養し、CTLによるp-NT2細胞への細胞傷害の動態(T細胞の接触、T細胞分裂、腫瘍死)をリアルタイムに観察できた。 現在、誘導できたHER2/neu特異的CTLの抗腫瘍作用を、CTLをneu-Nマウス癌性腹水中へ細胞移入し、1)腹水の減少、2)腹膜播種転移への抗腫瘍効果等を観察し、in vivoで評価しているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスのがん性腹水を用いたの実験系を立ち上げ、HER2に対する免疫トレランスの成立したがん性腹水中のリンパ球からでもHER2特異的細胞傷害性T細胞を効率的に樹立する方法を確立できた。そのCTLの抗腫瘍効果を見るために、本年度はin vitro imagingシステムを用いてがん細胞とCTLのinteractionをリアルタイム動的評価する実験を追加したため、in vivoでのCTLの抗腫瘍効果の評価はやや遅れ、来年度以降も継続することとなる。
|
今後の研究の推進方策 |
免疫トレランスに打ち勝つ癌抗原特異的CTLを癌性腹水・胸水中の免疫細胞TALから樹立するための研究をさらに進めていく。 <マウス腹水モデルによる、TAL由来CTL細胞治療> 誘導できたHER2/neu特異的CTLの細胞傷害活性の評価をin vivoで行う。つまり、誘導CTLをneu-Nマウス癌性腹水中へ細胞移入し、1)腹水の減少、2)腹膜播種転移への抗腫瘍効果 を調べる。この際、本年度にin vitroで樹立したimagingシステムを応用し、in vivoでの細胞治療の評価にも用いる。 <ヒト腹水TAL由来癌抗原特異的CTLの樹立>を開始する。 ①胃癌、膵癌、食道癌、乳癌患者などから癌性胸水・腹水を採取し単核球と腫瘍細胞を分離。②WT1やMUC1の全蛋白から得た11aaずつoverlapする15aa長のペプチドを利用した、HLA非拘束性に抗原提示 可能となったがん抗原ペプチドカクテルを利用し、T細胞へWT1とMUC1の抗原提示を行う。(抗原提示細胞はB細胞やTGF-βカラム通過した少量のMonocyteやDCを利用、又は腹水から単核球を分離し樹状細胞を誘導したMoDCを用いる)③先行研究でも証明した、CTL樹立過程で抗原刺激と共に抗OX40抗体と抗免疫checkpoint抗体(抗PD-1抗体)との接触により、活性化CTLのapoptosisを抑制し、担癌患者の免疫抑制状態でも機能維持が可能な、癌抗原特異的CTLを樹立する。④抗腫瘍免疫効果判定は患者胸・腹水中癌細胞をターゲットとした、CTLのIFN-γ産生(細胞内IFN-γ染色)で抗腫瘍免疫機能を評価、癌細胞傷害試験で抗腫瘍効果を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
樹立したTAL由来CTLのin vivoでの抗腫瘍効果を調べる実験に遅れが出ているため、次年度に予算を繰り越し、抗腫瘍効果を見る実験のための細胞培養やマウス飼育費に使用予定である。
|