ヒト肝細胞癌細胞株Hep-G2より、ALDH1A1高発現細胞をsorting後、sphere形成能を有する細胞のみを分離培養した。分離培養した細胞株においてALDH1A1 mRNAは高発現しており、抗癌剤(シスプラチン)耐性が確認できた。Hep-G2由来癌幹細胞株と親株での遺伝子発現をmicroarrayを用いた網羅的解析により比較検討したところ、EPCAM、CD133、ALDH1A1などの癌幹細胞マーカーの上昇と共に、CACNA2D4、CACNG4等の電位依存性Ca2+チャネル(voltage-gated Ca2+ channel: VGCC)の発現増強が確認された。VGCCに着目し解析を進めたところ、VGCC阻害剤であるアムロジピンが、癌幹細胞においてより強い増殖抑制効果を示した.アムロジピンは高血圧・狭心症治療薬として、臨床で広く用いられている薬剤である。これらの研究成果は学会や、英文論文として報告する予定である。 一方で、胃癌幹細胞株におけるVGCCの 高発現と、その阻害剤であるアムロジピン、ベラパミルの癌幹細胞抑制効果を見出し報告した(Ann Surg Oncol. 2021)。また、食道癌におけるANO9 (Ann Surg Oncol. 2020)、CLCN2 (Ann Surg Oncol. 2021)、CFTR (Ann Surg Oncol. 2021)、胃癌におけるANO9 (Cancer Sci. 2021)などのイオン輸送体の機能解析・臨床病理学的意義を解明した。同時に、上部消化管癌における、イオンチャンネルを介した細胞死・生存制御機構に関する新知見と既報を総説論文としてまとめた(Front Cell Dev Biol. 2021)。
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