肝細胞癌や大腸癌肝転移は肝切除により治癒が得られる場合もあるが、再発率は高い。肝切除が不可能な場合には抗がん剤治療を行うが、その種類は少なく効果も限定的である。 さらなる治療効果の向上のため免疫治療の選択肢がある。近年、癌免疫療法のターゲットの1つとしてT細胞不活化経路が着目され、実際に臨床応用されている。しかし,これらの治療が抗がん剤との相乗効果をもたらすかどうかについては未だ一定の見解が得られていない。 今回、我々は抗がん剤と免疫療法との相乗効果について肝細胞癌と大腸癌肝転移で検証を行った。まずは実際の切除標本において腫瘍免疫がどのような影響を与えているかを検証した。実際に腫瘍免疫が強い症例は弱い症例よりも予後が良好であることが肝細胞癌でも大腸癌肝転移でも確認された。化学療法の効果と腫瘍免疫の関連を評価したところ、化学療法の効果が高い症例では腫瘍免疫も高いことが確認された。一方で、化学療法の効果が低い症例では腫瘍免疫は弱かった。このことからT細胞不活化経路の制御が化学療法の反応性にも影響を与える可能性が考えられた。 これらを確認する実験モデルの開発を試みた。結果としては、効果を確認する動物実験モデルの確立までは至らなかったが、実際の切除標本の検証から、肝細胞癌や大腸癌肝転移においてT細胞不活化経路は間違いなく予後に影響を与えていることを確認し、英文誌に投稿、掲載された。また、本研究の過程で得られた多くの知見を用いて、他癌腫の検討も行い、同様の所見が得られたことを英文誌に投稿、掲載された。さらに、作成したデータベースをもとに様々な論文を英文誌に投稿し掲載された。これらの成果を通し、あらたな知見を世に発信できたと考えている。
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