研究実績の概要 |
膵癌に高発現する癌幹細胞マーカーは、 CD133, CD24, CD44, CXCR4, EpCAM, ABCG2, c-Met, ALDH-1, nestinなどが報告されている。Nestinは中間径フィラメントの一種で、膵癌の癌幹細胞性や増殖、転移に関与することが知られている。抗がん剤の投与とともに、nestinを抑制することで、相乗的な膵癌細胞の殺細胞効果がみられることも明らかとなっている。膵癌の癌幹細胞マーカーの中でnestinは、膵癌の有望な早期診断や新規治療法の新たな標的として期待されている。しかし、nestinは細胞内骨格タンパクの中間径フィラメントの一種のため、細胞膜表面ではなく主に細胞質内に存在しており早期診断法や新規治療法の開発は困難で、現在まで臨床応用には繋がっていない。本研究は、nestin陽性の膵癌幹細胞に特異的に発現する細胞表面の糖鎖を探索し、早期診断や治療の標的としての可能性を検討するものである。このため、生存したままの状態でnestin陽性の膵癌の癌細胞を同定、分離することを目的に研究を進めている。すでに報告されている、nestinのプロモーター領域および、2nd intronの配列を組み込んだレポーターベクターを作成した。これらのnestinの転写制御領域を組み込んだEGFP発現レポーターベクターをヒト膵癌培養細胞に遺伝子導入した。セルソーターを用いてEGFPの発現に基づいて、nestin陽性の膵癌培養細胞の分離を行なっている。さらに、近年のnestinのSNPが日本人の膵癌の発症に関連しているとの報告に基づき、変異ベクターを作成した。膵癌培養細胞株にこれらの変異ベクターとwild typeのnestin発現ベクターを遺伝子導入して比較することで、nestinのSNPの役割について検討している。
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