研究課題/領域番号 |
19K09207
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
石渡 俊行 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (90203041)
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研究分担者 |
佐々木 紀彦 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (80639063)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 癌幹細胞 / 膵癌 / 糖鎖 / Nestin / SNP / エクソーム解析 |
研究実績の概要 |
膵癌は抗癌剤の開発や投与方法の改良にも関わらず、極めて予後が悪い。膵癌は60歳以上に好発することから、高齢化により世界的に患者数が増加している。膵癌は早期診断が困難で著効を示す治療法がないため、このままの状態が続けば社会問題にもなることも危惧される。 ヒト膵癌培養細胞株と膵癌組織における糖鎖の発現と役割、特に膵癌の転移や抗癌剤耐性に重要な役割を果たしている癌幹細胞と糖鎖の関係を解明し、糖鎖を標的とした新規治療法の開発に向けた研究成果を得ることを目的とした。 今回検討した8種類の膵癌培養細胞株の中で、MIA PaCa-2細胞に糖脂質のGM2が最も高発現していた。GM2陽性のMIA PaCa-2細胞はGM2陰性細胞よりも増殖が速く、3次元培養すると浮遊細胞塊(スフェア)が形成された。GM2の陰性細胞を3次元培養すると、大部分の細胞がGM2陽性細胞に変化した。ヌードマウスに移植したGM2陽性のMIA PaCa-2細胞は、GM2陰性細胞よりも高い腫瘍形成率を示し、より大きな皮下腫瘍を形成した。ヒト組織での発現検討では、発症年齢が若く腫瘍径が大きく、病期が進行し組織学的な悪性度が高いヒト膵癌患者で、有意にGM2の発現が増加していた。GM2を標的とした膵癌の早期診断法の開発や光免疫療法などの細胞表面抗原を利用した新たな膵癌治療にもGM2の有用性が期待される。膵癌の癌幹細胞の性質を明らかにするため、nestin陽性の膵癌細胞の分離同定を試みた。ヒト膵癌培養細胞株にnestin のプロモーター支配下で蛍光を発するベクターを導入し、蛍光を発現する細胞を指標にしてnestin陽性細胞をセルソーターで分離した。ヒト膵癌培養細胞株では、nestin発現細胞をレポーターアッセイで分離することは困難で、エピジェネティックな制御やmiRNA などがより効果的に関与している可能性が示唆された。
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