研究課題/領域番号 |
19K09211
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
村上 健太郎 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (40436382)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 食道扁平上皮癌 / 癌幹細胞 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
本研究では食道扁平上皮癌細胞株を用い、至適な癌幹細胞マーカーを選択することを目的とした。まず癌幹細胞が濃縮されるsphere formation assayを用いて、他癌腫で報告があるCD24,133,EpCAMを検索したが、濃縮を認めなかった。機能的マーカーであるALDH1に着目したところ、全細胞では12.4%がALDH1陽性であったが、sphere構成細胞では28.7%が陽性であった。ALDH1は食道扁平上皮癌における至適癌幹細胞マーカーの候補と考えられたため、その妥当性に関して基礎的、臨床的検証を行った。ALDH1陽性細胞は陰性細胞に比しSox2,Nanog蛋白発現が上昇しており、CDDPによる化学療法、放射線治療にも抵抗性を示した。さらに術前未加療の食道扁平上皮癌96例をALDH1に関して臨床病理学的に検討したところ、ALDH1 negative群の予後(5年原病生存率)は、ALDH1 positive群に比べ良好な傾向にあった(p=0.065)。ALDH1は妥当なTICマーカーと考えられた。siRNAを用いてALDH1発現を抑制したところ、Sox2,Nanog蛋白発現が低下し、化学療法、放射線治療に対する治療抵抗性が改善した。ALDH1は基礎的および臨床的に妥当な食道扁平上皮癌の癌幹細胞マーカーと考えられ、これを制御することにより治療抵抗性の改善が得られる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載した通り、2019年度はALDH1陽性食道扁平上皮癌細胞の癌幹細胞としての妥当性を確認することができたため、順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は研究計画書の記載に則り、予定通り行う。まず、ALDH1陽性細胞のエピゲノム解析による食道扁平上皮癌幹細胞固有のエピジェネティック機構の解明する。本研究ではエピジェネティック機構の中でもヒストン修飾に着目し、クロマチン免疫沈降-塩基配列解析(Chip-seq解析)を行う。食道扁平上皮癌細胞株T.Tn,TE1,TE2を対象とし、FACSを用いてALDH1陽性/陰性分画に分類する。それそれの分画を当施設の共通教育機器である次世代シークエンサー(Hiseq1500,NextSeq500 illumina)により解析し比較検討する。次に、ALDH1陽性細胞におけるエピジェネティック治療薬による上記機構の変化を解明する。獲得したALDH1陽性細胞において、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害することによるその性質の変化を解析する。また同様に、ALDH1陽性細胞において、ヒストンメチル化酵素EZH2を阻害することによるその性質の変化を解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していたPCが新型コロナの影響で、購入ができなかった事による。
|