研究課題
膵癌は局所進展タイプと遠隔転移タイプに大きく二分され、さらにサブタイプ分類されるというのが我々の仮説である。術前に組織採取が困難な膵癌ではリキッドバイオプシーが有用であるため、本研究では血液検体から抽出したエクソソームの情報を基に膵癌サブタイプ分類の確立と臨床応用を目的とした。まずは膵癌切除例の術前血液検体から初発再発形式ごとに検体を選択し、エクソソームを抽出した上で核酸分子に対する網羅的なmRNA解析およびmicroRNA解析を行い、その他の分子の中で脂質は炎症・免疫応答・癌の進展等のシグナル伝達において重要な役割を果たすことからエクソソーム中のリピドーム解析を行うこととした。当科で治療を受けた膵癌患者の治療前血液検体を用い、エクソソーム中に含まれるmicroRNAの網羅的解析を行った。経過中肝転移・肺転移・腹膜播種等の遠隔転移を起こした症例が10例、局所再発が5例、無再発例が5例含まれていた。エクソソームを抽出後、BGISEQ-500を用いた解析をしたところ、各再発・無再発形式によって群分けした場合のmiRNA発現で差を認めたものを抽出し、解析を行った。次にエクソソーム内の脂質に注目し、リピドーム解析を行った(shotgun法およびtargeted lipidomics assay)。その結果、各再発・無再発形式により特徴的なリピドームの高低が抽出され、特にあるリピドームクラスについては無再発群と再発群でP=0.057と有意差はないものの含有量の違いを認める結果であった。さらにエクソソーム中のmRNAについて次世代シーケンサーによる網羅的解析を行い、再発・無再発形式別での血液由来エクソソーム内における発現差異解析を行った。