研究課題
イリノテカンに代表されるtopoisomeraseI (topoI)阻害剤の耐性メカニズムの解明を行った。topoI阻害剤の暴露によりtopoIが分解される場合、topoI阻害剤耐性となる。TopoIが分解された癌細胞ではイリノテカンなどのtopoI阻害剤は効果がなく、耐性となる。TopoI分解の最終過程にはユビキチンプロテアソーム経路がかかわっている。我々はこのメカニズムに着目し、効果増強を目指した治療法の開発を行った。TopoIの分解を抑制することができれば、イリノテカンをはじめとした、topoI阻害剤の効果増強を狙うことができる。本研究ではプロテアソーム阻害剤を用いてtopoI阻害剤の効果増強を目指した。
2: おおむね順調に進展している
プロテアソーム阻害剤として実験に用いられるMG132を用いて基礎検討を行った。イリノテカン耐性大腸がん細胞株であるHCT15を用いて検討を行ったところ、MG132を加えた場合、topoI分解は認められず、またイリノテカンへの耐性が弱まり、イリノテカンとMG132を併用すると細胞死が起きた。このため、プロテアソーム阻害剤はイリノテカン効果増強をもたらすと考えられ、さらなる検討を行った。現在プロテアソーム阻害剤は多発性骨髄腫の治療に用いられているボルテゾミブがある。また他にもカルフィルゾミブやイキサゾミブがある。これらを用いて検討を行った。topoI分解はどのプロテアソーム阻害剤でも認められた。一方で、細胞死に関してはボルテゾミブでは有意な差を認めなかった。このため、現在カルフィルゾミブとイキサゾミブを用いて検討を行っている。
カルフィルゾミブとイキサゾミブを用いて、イリノテカン効果増強がもたらされるか今後検討していく。細胞株での検証ができれば、マウスを用いたin vivo実験を行う。イリノテカンおよびこれらのプロテアソーム阻害剤は市販のものであり、臨床研究として切除不能進行再発大腸癌患者を対象に新規治療法として検討を行っていく予定である。
2020年度に、プロトンポンプ阻害剤とイリノテカン耐性の関連についての検討の進捗に後れを生じ、未使用額が生じた。このため、プロトンポンプ阻害剤とイリノテカン耐性の関連についての検討を次年度も継続して行うこととし、未使用額はその経費に充てることにしたい。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)
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