研究課題/領域番号 |
19K09221
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
石川 晋之 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (80419639)
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研究分担者 |
日吉 幸晴 公益財団法人がん研究会, 有明病院 大腸外科, 副医長 (30573612)
清住 雄希 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (30827324)
宮本 裕士 熊本大学, 病院, 講師 (80551259)
宮田 辰徳 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (80594887)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 薬物療法 / スタチン バイオマーカー / EGFR経路 / Wnt経路 / TGFβ経路 |
研究実績の概要 |
本研究「バイオマーカーに沿ったスタチン併用大腸癌治療法の開発」では、使用できる薬剤に制限があり、予後が不良であるKRAS、BRAFに変異を有する大腸癌症例に対し、スタチンの可能性を検討し、その治療効果を予測するバイオマーカーの同定を目的としている。我々はTCGAに登録されている大腸癌症例、文献等で得られた大腸癌細胞株のデータを検討し、KRAS、BRAF、PIK3CA、PTENをバイオマーカーに、頻度の高いgenetic status 4パターンに対応する大腸癌細胞株4種類を選択し、薬剤投与と抗腫瘍効果を判定した。TCGAと細胞株のデータ解析の結果、KRASもしくはBRAFに変異を有するのは38.3%であった。頻度の高かったgenetic statusのパターンは、1) 全て野生型 2) KRASのみ変異型 3) BRAFのみ変異型 4) KRASとPIK3CAの両者が変異型の4つであった。この4パターンで全症例の90%を網羅していた。シンバスタチン 1uMとWnt阻害剤 5uMを併用すると、全て野生型の細胞株では、それぞれの薬剤の持つ抗腫瘍効果の和として現れた。KRASのみ変異型の細胞株では細胞増殖が60%抑制された。それぞれ単独投与では、ともに1%程度の増殖抑制効果しかなかったことから、相乗的な抗腫瘍効果と判断した。また、BRAFのみ変異型の細胞株では細胞増殖が85%抑制された。それぞれ単独投与では7%と45%の増殖抑制効果であったため、これも相乗的な抗腫瘍効果と考えられた。KRASとPIK3CA両者が変異型の細胞株では細胞増殖が70%抑制され、それぞれ単独投与では0%と1.5%の増殖抑制効果であったため、これも相乗的な抗腫瘍効果ありと判断した。シンバスタチンとWnt阻害剤の併用は、KRAS、BRAF変異を有する大腸癌に対する新たな治療法となりえる可能性が示唆された。
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