研究課題/領域番号 |
19K09225
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
鯉沼 広治 自治医科大学, 医学部, 准教授 (20382905)
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研究分担者 |
北山 丈二 自治医科大学, 医学部, 教授 (20251308)
堀江 久永 自治医科大学, 医学部, 教授 (20316532)
田原 真紀子 自治医科大学, 医学部, 助教 (30406102)
井上 賢之 自治医科大学, 医学部, 講師 (80375279)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 直腸癌 / 免疫放射線療法 / Abscopal Effect / アデノシン / メトホルミン |
研究実績の概要 |
(1) 大腸癌自然肺転移株LuM-1は親株Colon26に比べて、膜型アデノシン産生酵素CD73の発現が強く、放射線照射により発現が増強した。Lu-M1皮下接種したマウスに対して、接種後12、14、16日目に4Gy×3回、腫瘍局所に限局したRTを施行し、12、14、16、19、22、25日目に抗CD73抗体 (TY/23) およびRat IgG2a isotype control 200microgrの腹腔内投与を付加し、28日目に安楽死させ、皮下腫瘍の重量と肺の肉眼的転移結節個数を測定した。RT+Anti-CD73群では、RT+Isotype control群と比べ、皮下腫瘍の重量は有意に低下していた (p<0.05)。また、肉眼的転移結節個数も有意に減少しており (p < 0.05)、半数 (4/8) で肺転移は認めなかった。また、接種後18日目の脾臓内CD4、CD8a細胞におけるIFN-gamma陽性細胞の割合は、RT+Anti-CD73群で有意に高く、腫瘍浸潤T細胞においても同様の傾向が認められた。術前CRTを受けた直腸癌組織では腫瘍細胞と間質にCD73の発現を認めたが、その染色形態は症例間で著しく異なっていた。CD73の発現強度でRFSを比較すると、間質高発現群は低発現群と比較して有意に再発しやすく (p = 0.049)、特に、腫瘍細胞と間質で共に高発現していた群はその他と比較して非常に再発率が高く( p = 0.0059)、OSも悪かった (生存期間中央値=59.9か月, p = 0.0077)。 (2) 同様のマウス自然肺転移の実験系で、RTのメトホルミンの経口投与(1mg/mlの自由飲水)を併用すると、RT単独群と比較して皮下腫瘍の重量には有意差は認めなかったが、肺転移の個数は減少する傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス大腸癌細胞colon26のサブクローンLuM1を用いて自然肺転移をきたす動物モデルを作成に成功し、照射によって腫瘍内のアデノシン濃度産生が亢進していること、腫瘍局所に限局した放射線療法に免疫抑制物質アデノシンの産生を阻害するCD73抗体の投与を付加することで、照射した皮下腫瘍のみならず、非照射部に存在する肺転移の成立が有意に抑制されること、さらに脾臓中のT細胞のIFN-gamma産生能が増加することなどの基礎的データが確認できた。また、同じ実験系を用いて、局所照射に抗糖尿病薬メトホルミンを併用したIn vivo実験を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
放射線照射を受けた腫瘍細胞においてCD73の発現が誘導され、CD73阻害抗体が非照射部位に存在する肺転移を抑制する事実は、照射で一部の癌細胞が障害されれば、いわいる「がん抗原」が多量に放出され、宿主の免疫応答が惹起されるのに対し、アデノシンによる局所免疫応答の抑制がabscopal effectの発現を抑制している一因となっていることを示唆すると思われる。しかし、肺転移の抑制効果は十分とは言えなかった。そこで、今年度は、この動物実験システムを用いて、放射線に抗糖尿病薬メトホルミンを組み合わせることで、In vivoでより有効なabscopal effectが誘導されるかどうか?を確認することを目指す。さらに、それぞれの個体から、皮下腫瘍、所属リンパ節、末梢血、脾臓、肺の各組織内に存在する免疫細胞を採取し、そのフェノタイプ、細胞機能、照射による変化などをIn vitroで解析することにより、メトホルミンによる照射腫瘍組織、局所リンパ節内、および全身の免疫応答の変化を把握し、Abscopal効果の発現との関連性を明らかにする。また、ヒト直腸癌における切除標本の免疫染色にてその浸潤細胞の種類を定量し、照射腫瘍内における局所免疫応答と予後との関連性を追求することで、このセオリーがヒトにも外挿可能かどうかも明らかにしたい。以上の結果から、実臨床への応用を目指して、最も実用性の高いと考えられる治療プロトコールを見出すことを最終目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通り使用している。 残金については、2021年度物品費として使用予定である。
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