今年度も昨年までに引き続き、経時的膵癌体積データを用いた数理モデル構築、及び、数理モデルに基づく進展形式(広範囲転移型とオリゴ転移型)の予測因子の解析において、コンピュータ上での臨床試験において、予測因子の妥当性および試験的治療の有効性を調べた。治療法としては、化学療法、放射線療法、手術切除や、組み合わせによる局所重点的治療法の影響のみならず、休薬期間の及ぼす影響についても、薬剤別に数理モデルを基に予測した。また、数理モデル上のパラメータである環境収容力の大きさが治療成績に及ぼす影響も、治療法毎に調べた。 当研究から派生したプロジェクトとして、原発巣、及び転移巣内の腫瘍細胞がGomperts増殖様式にて進展する数理モデルでの近似式作りに取り組んだ。先ずは原発巣内に元々存在する腫瘍細胞Type0と、転移能力を獲得した変異細胞Type1の細胞数を近似する。環境収容力に到達した時点では、各細胞の増殖速度と死亡速度が均衡している点を考慮し、2ステップモデルにおける近似式の導出を行った。モデルを基に確率シミュレーションを行い、シミュレーション結果と合致する近似式を求めることに成功した。 更に、転移巣における腫瘍細胞であるType2の近似へと進んでいるが、Type1と異なり原発巣と環境収容力を共有しないため、転移巣別に独立した環境収容力を準備する必要がある。Type1から無数のType2が生じる時刻の近似式の導出が鍵となり、こちらの導出に取り組んでいる。
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