研究課題
本研究では、高BMI(N=5)と標準BMI(N=5)の食道癌・正常組織ペアを用い、131遺伝子targeted-resequencingと網羅的遺伝子発現解析から肥満症例に特徴的な遺伝子・遺伝子発現変化を同定する。次いで、これまで取り組んできた肥満食道癌症例の内臓脂肪組織の網羅的遺伝子発現解析結果から、肥満症例における癌組織と脂肪組織で互いにリンクする遺伝子変化・発現変化を絞り込む。さらに、その候補因子をこれまで集積した231例のサンプルで解析し、患者の内臓脂肪量やBMI等の代謝因子の層別化解析を行い、肥満症例における癌細胞-脂肪細胞のinteraction(相互関係)を明らかにする。これまでの我々が手がけた食道癌症例の大網脂肪組織サンプルを用いた遺伝子発現解析により、高BMI症例(N=3)の大網脂肪組織では、標準BMI症例(N=3)に比べて、補体C3およびC4の発現が有意に上昇していることが見出された(P=0.0028)。そこで今回、さらに症例数を60症例に増やし、real-time PCR法を用いて大網脂肪組織におけるC3およびC4の発現量を測定した。Reference geneの選定に苦慮したが、最終的には3つの遺伝子を組み合わせたmultiple referenceマーカーを用いることで、再現性の高いデータを得ることができるようになった。臨床病理学的因子やCTによる内臓脂肪量、およびStageごとに詳細な層別化解析を行ったが、C3、C4と腫瘍の進行度に関して明らかな相関性は認められなかった。
2: おおむね順調に進展している
前回報告時までに着目した補体C3およびC4は、臨床データとの総合解析において悪性度に影響を与えている可能性は否定的であった。そこで、これまで内臓脂肪組織がアーカイブされている274例のCT内臓脂肪量を測定し、そのうち病期を適切に割り振った51症例に関して、再び網羅的遺伝子発現解析(Affymetrix, Clariom D)するため、委託外注に提出した。この解析生データを取得したばかりである。
上記網羅的遺伝子発現解析データを、臨床病理および再発予後データと統合し、解析を進める予定である。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件)
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