研究課題
狭心症や心筋梗塞の治療法として冠動脈バイパス術は一般的な治療法である。近年静脈グラフトの採取法を工夫することで動脈グラフトに匹敵する成績が報告さ れるようになった。静脈グラフトを採取する際に直接血管壁に触れずに周囲脂肪と一塊にして摘出し、従来法のように採取時の血管攣縮解除のための血管拡張 手技を行わない、この一連の操作がno touch techniqueと呼ばれるものである。しかし手技の問題点として血管の枝やリンパ管の処理が煩雑となる部分があり、 術後のグラフトからの出血や採取部のリンパ瘻の発生、さらには組織欠損に由来する創傷治癒遅延による創部感染症につながることもあり手技自体の効率化が望まれる。そこで我々は新規のエネルギーデバイスを使用しno touch techniqueで血管の採取を行うことを考案した。使用する機器はμ波を用いたエネルギーデバ イスであり、本邦で開発されたものである。2017年4月に発売されておりすでに消化器外科や呼吸器外科の鏡視下手術、甲状腺、乳腺の手術で用いられている。 血管を挟んで止血と切開が同時にでき、組織を挟んだ部分にのみ作用するので周囲組織への損傷が最小限となることが期待されている。μ波を用いたエネルギーデバイスを用いて血管採取を行い、手技の質の改善が得られるかどうかを検討している。家畜ブタ、ミニブタを用いた実験を検討しており血管採取直後に摘出標本の一部を用いて開存性に関して重要とされる組織構造が保ているか、血管機能が保たれているかを病理学的、生理学的に評価する。さらにブタを使用して冠 動脈バイパス術を行い慢性期モデルを作成し、開存度、病理変化、血管造影による血管全体の内腔評価を行う。
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