研究課題/領域番号 |
19K09250
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
天野 英樹 北里大学, 医学部, 教授 (60296481)
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研究分担者 |
江島 耕二 北里大学, 医学部, 准教授 (30327324)
北里 英郎 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (90195256)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | mPGES-1 / PGE2 / Treg / TGF-beta / EP4 |
研究実績の概要 |
令和2年度 ①実際にTregsが虚血筋組織に集積するか②Tregsの集積を阻害すると虚血改善の遅延を認められるか③虚血時にどのEP受容体が最も発現の増強を認めるかの3つを検討するために以下の実験を行なった。 1.虚血筋組織におけるFoxp3のmRNA発現効果の検討:mPGES-1KOとWTで下肢虚血モデル作製後,経時的に定量的PCRを用いて虚血筋肉組織おけるFoxp3の発現を測定した。mPGES-1KOでの虚血筋組織のFoxp3の発現はWTと比較し有意に低下を認めた。2.虚血筋組織に集積するFoxp3陽性細胞の検討:虚血筋組織におけるFoxp3陽性細胞数はWTと比較しmPGES-1KOで有意に低下を認めた。3.虚血筋組織におけるTGF-βのmRNA発現効果の検討:Tregへの分化及び血管新生促進因子であるTGF-βの発現はWTと比較しmPGES-1KOで有意に低下を認めた。4.Tregの集積を阻害した時の虚血改善効果の検討:モデル作製後,Tregs機能を特異的に阻害する葉酸受容体(FR4)中和抗体を投与するとWTで有意に虚血の改善効果の遅延を認めた。しかし、mPGES-1KOでは大きな変化が認められなかった。5.虚血筋組織におけるEP受容体のmRNA発現効果の検討: WTでモデル作製後,定量的PCRを用いてPGE2のサブタイプであるEP1-4受容体の発現を経時的に測定した.虚血筋組織でのEP4受容体の発現はEP1,2,3受容体と比較し、有意に発現の増強を認めた。 以上の実験結果よりmPGES-1/PGE2による虚血の改善にTregが関与し、そのときに関与している血管新生促進因子でかつTregの分化を促進に寄与するTGF-βがkey mediatorであることが示唆された、またPGE2の受容体の中でEP4受容体がもっとも関与している可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年の年末から春にかけ、新型コロナ感染症により、実験に時間を割く時間が短縮されたため、研究結果をあげることが出来なかった。夏頃(具体的に6月以降)から通常勤務形態になったため、例年通りに研究に時間を割くことが可能になった。研究結果を、日本薬理学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は①Tregs移植後の虚血改善効果の検討②TregsがTGF-βを産生するか否かの検討③EP1―4アゴニストをTregs細胞に刺激し,どのアゴニストによる刺激が最もTGF-βを発現するか否かの検討を行う。 1.mPGES-1KO及びWT由来のTregsによる虚血改善効果:WT及びmPGES-1KOの胸腺からTregs(CD4+CD25+)と非Tregs(CD4+CD25-)を抽出し,マウスに移植する。移植後5日目にmPGES-1KOでモデルを作成し,経時的に左右血流比を測定する。2.TregsでのTGF-β発現効果の検討:WT及びmPGES-1KOの胸腺からTregs(CD4+CD25+)を抽出後,培養する。CD3抗体でTregsを抗原 刺激し,WT及びmPGES-1KOのTregsでTGF-βの発現に差があるか否か定量的PCRを用いて検討する。3.EP1-4アゴニスト刺激下でのTGF-βの発現効果の検討:WT及びmPGES-1KOの胸腺から抽出したTregsを培養する。小野薬品株式会社から提供された。EP1-4アゴニストをTregsに添加し,TGF-βの発現効果を比較検討する。 研究が当初計画通りに進まない時の反応各実験最低3回行い再現性があるか否か確認する。今回の研究はWTとmPGES-1KOで急性下肢循環障害モデルを作成しmPGES-1/PGE2による虚血改善が虚血部位に胸腺由来のTregsが集積することによることを念頭に行う。しかし末梢血液中にTregsの変化が認められない場合は、虚血改善が筋肉組織由来のTregsに起因によるものであると考えられ,Tregsの抽出も筋肉組織を用いなければならない。常にそのことを念頭に置いて,結果をよく共同実験者確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症により、研究する期間が例年より少なかったため、研究費を全て使用することが出来なかった。
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