研究課題/領域番号 |
19K09254
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
岡田 隆之 関西医科大学, 医学部, 准教授 (60421278)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 大動脈疾患 / 嚢胞性腎肝疾患 / 大動脈解離 / 網羅的遺伝子探索 / 心臓血管外科 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
嚢胞性腎肝疾患の影響に具体的に検討したものはなく、腹部大動脈瘤(AAA)に対するステントグラフト内挿術(EVAR)を施行した385例の検討を行った。2017年1月から2023年1月にかけて臨床主要アウトカムは、EVAR後のAAA拡大と長期のエンドリーク率として解析した。これらのうち、274人(71.2%)が嚢胞性腎疾患、167人(43.4%)が嚢胞性肝疾患を合併していた。また患者の平均年齢は73.8歳±8.7歳で77.1%が男性。 嚢胞性腎または肝疾患を有する患者とこれらの疾患のない患者との間で、EVAR後のAAA拡大に有意差はなかった(それぞれp=0.733およびp=0.512)。長期エンドリーク率はIa[2.2%]、Ib[0.36%]、II[16.0%]、IIIb[0.36%]、IV[0.36%]であり、なし[80.7%]。この研究では長期のエンドリークとAAAの拡大の間に統計的な差は認めなかった(p = 0.16)。これらの結果は、嚢胞性腎肝疾患の存在がAAAに対するEVARの長期転帰に有意な影響を与えないことを示唆しており、今後は嚢胞性疾患と大動脈瘤関連の遺伝子解析を進める。 また、胸部大動脈瘤症例ではマルファン症候群の家系からFNB変異が確認された。 EFF like domainの変異であり、この家系は病変が眼症状に限局しておりFBN変異、あるいはTGFb シグナリングの関与が示唆された。CRISPR-Cas9 のマウスモデルを作成して眼科、薬理系とも共同研究のうえ、マウスに導入して動脈瘤の発症機序に関する基礎実験への展開を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍での臨床研究のため症例数の確保と、その臨床経過のフォローアップに遅延を生じている。再延長承諾により、想定された進捗に復帰されると考えている。 検討課題の背景因子として、これまで嚢胞性腎肝疾患の影響を具体的に検討したものはないため、その検討を併施した。腹部大動脈瘤(AAA)に対するステントグラフト内挿術(EVAR)を施行した385例の検討を行い、2017年1月から2023年1月にかけて主要アウトカムは、EVAR後のAAA拡大と長期のエンドリーク率として解析した。 これらのうち、274人(71.2%)が嚢胞性腎疾患を患っており、167人(43.4%)が嚢胞性肝疾患を患っていました。患者の平均年齢は73.8歳±8.7歳で、77.1%が男性でした。 嚢胞性腎または肝疾患を有する患者とこれらの疾患のない患者との間で、EVAR後のAAA拡大に有意差はなかった(それぞれp=0.733およびp=0.512)。 長期エンドリーク率はIa[2.2%]、Ib[0.36%]、II[16.0%]、IIIb[0.36%]、IV[0.36%]であり、なし[80.7%]であることがわかりました。この研究では長期のエンドリークとAAAの拡大の間に統計的な差は見られなかった(p = 0.16)。
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今後の研究の推進方策 |
腹部大動脈への解析は、嚢胞性腎臓または肝臓の存在がAAAに対するEVARの長期転帰に有意な影響を与えないことが示唆されるが、特定の遺伝子変異が予後に介在する従来の検討結果との差異を解析を進める。
また、胸部大動脈への解析でFBN2変異;c.1793T>G p.Phe598Cys (exon13)に関して、蛋白構造に注目すると、Phe598 は (1) EGFモチーフ(+Ca結合)のフォールディングに必須 (2) Cysteinに置換すると、本来のS-S結合と干渉することから、病因になり得る可能性があると考えられる。そのため、CRISPR-Cas9 のマウスモデルを作成して、FBN2変異が今まではくも指が主表現型と考えられてきましたが、動脈流出部狭窄を起こすことを証明できれば新しい知見となる。Phe598はマウスでも保存されており、ホモ、ヘテロ接合の両方の病態がみれますので発展的な検討と考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
経年的に課題遅延による計画予算の遂行はなされなかった。コロナ禍で受けた臨床状況の回復から、再延長承認後は完遂が見込まれる。 具体的には①胸部・腹部大動脈瘤への症例確保と遺伝子解析。②腹部大動脈瘤との遺伝子相関の有無、③嚢胞性疾患との関連遺伝子を検討。④病理組織が使用できる症例はタンパク発現と遺伝子変異の相関に関して精査を行い、⑤後天的遺伝子修飾が発症メカニズムに関与しているか検証を行う。⑥有効な発現遺伝子が同定できた場合は、今後の臨床で有用なバイオマーカーとして使用できる可能性がある。
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