外科専門医手術手技トレーニングにおける注視視点解析の有効性に関する研究

2021 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 19K09260
• 研究機関: 弘前大学
• 研究代表者: 皆川 正仁 弘前大学, 医学研究科, 教授 (50374830)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2023-03-31
• キーワード: 注視視点解析 / 外科専門医教育 / 手術手技トレーニング

研究実績の概要

本研究は、冠動脈バイパス術や心臓弁膜症手術において、運針中の注視視点について定量的に可視化することで、熟練指導医と修練医が行なう血管吻合の違いを解析することを目的としています。また、この解析結果を被検者に還元することにより、手術手技の上達に寄与するか否かについて調べるものです。本年度は、最終年度に当たりますが、手術手技における注視視点解析の総合的な解析と、本手法の結果に基づいた反復手術手技トレーニングの上達効果について、最終評価を行う計画でありました。
昨年度までは、注視視点解析装置の視線追跡の測定限界により、冠動脈吻合という微細な視線の動きを追視することが難しいということが明らかとなり、当初の研究計画に変更を余儀なくされたため研究の遂行に遅れが生じました。このため、本年度は、視点追跡装置と測定手法の見直しを行いました。視点追跡の対象となる冠動脈吻合中の運針については、手術中の吻合部位の記録動画を大画面に映し出し、この画面上の運針の動きをアイトラッカー装置（視点追跡用ゴーグルとデータ計測専用スマートフォンから構成）を用いて計測しました。その結果、ミリ単位の視点追跡は困難でしたが、大まかな視点追跡が可能となり、熟練医師と修練医師においてデータ収集をすることが出来ました。さらに、視点追跡ゴーグルをかけた状態で小口径人工血管どおしを吻合して、リアルタイムに吻合中の視点追跡データを取り込むことに成功しました。現在データの解析途中ですが、熟練医師と修練医における違いを数値化できる見込みです。
研究計画の遅れにより、令和４年度まで研究期間の延長をすることになりましたが、本年度はデータサンプル数の拡大と解析を行ない、最終報告ができるよう研究を遂行する計画です。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

注視視点解析に協力を頂いている先生方と、コロナ禍により直接意見交換や実験の打ち合わせ、測定手法にかかわる基礎実験を行うことが長期に中断したことが一因でありました。さらに、注視視点解析装置の測定限界により、微細な視線の動きを追視することが難しいことが判明したことで、測定方法や測定対象の見直しを余儀なくされ、研究の遂行に遅れが生じました。
しかしながら、視点追跡装置と測定の対象を見直したことで、冠動脈吻合や小口径人工血管の吻合について測定ができる見込みとなりました。ミリ単位の正確な視点追跡は、測定機器の技術的な測定限界によりできませんが、視点の動きを大まかですが数値化することができました。その結果、サンプル数は未だ少ないですが、熟練医師と修練医との間に客観的な違いを示すことができる見込みです。

今後の研究の推進方策

令和４年度は、新たに構築した測定方法を用いて、冠動脈バイパス吻合における視点追跡ならびに、リアルタイムの人工血管吻合中の視点追跡の記録に関するデータを蓄積して、統計解析可能なサンプル数を集めることに努めます。さらに、熟練医師と修練医との吻合手技における違いを明らかにすることで、外科手術手技トレーニングに本手法が寄与できる可能性について見出すよう努めます。

次年度使用額が生じた理由

研究の遂行に遅れを生じたことで、実験用縫合糸や吻合モデルなどの消耗品、統計解析のための経費、論文校閲費用、学会発表のための旅費などの支出が残っているために、次年度への繰越金が生じました。令和４年度は、上記支出に充てる予定となっています。