研究実績の概要 |
若手外科医のスキルアップおいて様々なトレーニング方法が提案されているものの, 外科医の手術手技の習熟度を客観的に評価する方法は限られている. 手術トレーニングを行う過程において一定の基準を設けたうえでトレーニングを行うことは技術向上の面で重要な要素となる. 本研究では血管吻合中の術者の視線に着目し, ベテラン医師と若手医師間にて血管吻合時の視線に差があるか,さらに術者間での吻合時間および吻合中の各動作時間を比較検討した.最終年度は,アイトラッカーを用いて人工血管吻合する状況を注視視点解析を行った. 被験者は心臓血管外科指導医(Group A, N=2), 心臓血管外科中堅医師(卒後10年目)(Group B, N=2), 若手心臓血管外科医(卒後3-5年目)(Group C, N=3). メガネ型の視線測定装置(アイトラッカー) を装着した状態で人工血管(8㎜)同士の側端吻合(連続縫合)を行い, 吻合部(周囲15×15cm)の視線注視割合, 運針時の刺入~刺出までの時間, 刺入点の修正割合, 針の持ち替え時間を測定した. 結果を解析した結果,血管吻合時において若手, 中堅, 指導医と修練年数が長くなるにつれ運針後の針の持ち替えを吻合部の視野範囲内で行う傾向が強く, 特に指導医において吻合箇所の注視時間の割合が高い結果となった. 運針時の刺入から刺出までの時間および針持ち替え時間は若手, 中堅と比較して指導医で短い結果となり, 刺入点の修正割合も修練年数に応じて少なくなる傾向にあった. 注視視点解析法を用いた手術手技トレーニングは,若手外科医の手術手技向上のための教育方法の一助に成り得ると考えられた.
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