研究課題
<目的>包括的高度慢性下肢虚血 (chronic limb-threatening ischemia : CLTI) における治療において、血行再建のみがCLTIにおけるエビデンスのある治療となっている理由の一つとして、CLTI患者の組織障害のメカニズムが解明されていないことが挙げられる。本研究では、虚血組織で起こる血管新生にフォーカスし、関連因子として知られる一酸化窒素(nitric oxide : NO) やCD34に着目した。NOは生体内での半減期が非常に短く定量化が困難であることから、NOの生成過程において触媒としての機能を果たす一酸化窒素合成酵素 (nitric oxide synthase : NOS) の発現を調べた。<方法>CLTI患者29名 (CLTI群) と、整形外科悪性腫瘍によって下肢切断を受けた患者10名 (Control群) の組織を収集した。CLTI群およびControl群の採取組織における神経性NOS (neuronal NOS : nNOS) 、内皮性NOS (endothelial NOS : eNOS) 、誘導性NOS (inducible NOS : iNOS) 、およびCD34をマーカー因子として注目し発現を検討した。<結果>CLTI群とControl群の間で、3種類のNOSおよびCD34を発現する血管内皮の総面積において有意差は認められなかった。しかし、合計輝度値においてiNOS (p<0.01) とCD34 (p=0.02) に関して、両群の間で有意差を認めた。さらに、足趾切断後の救肢生存率に関して、iNOSの合計輝度値の四分位点25%の値を基準にCLTI群を高発現群と低発現群に分けた時、上位25%の高発現群では低発現群に比べ有意に生存率が高かった (p<0.01) 。
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