研究課題/領域番号 |
19K09264
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
海野 直樹 浜松医科大学, 医学部, 特任研究員 (20291958)
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研究分担者 |
犬塚 和徳 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (00397415)
佐野 真規 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (40733514)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 腹部大動脈瘤 / ステントグラフト内挿術 / エンドリーク / MRI / 4D-flow |
研究実績の概要 |
腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術(EVAR:Endovascular Repair of Abdominal Aortic Aneurysm)後の合併症の一つであるTypeIIエンドリーク(T2EL)は術後合併症として未解決の問題である。多くのT2ELが特に問題なく収束することから、全EVAR症例中、どの症例がendoleakが残存し、瘤径の拡大をもたらすか否かを判別できれば、本問題の解決に向けて大きく前進することできる。瘤増大予測が可能となれば、瘤径増大が予測される症例に対しては早期に介入することが可能となり、瘤の増大破裂を予防できるからである。そのためにはELが遷延し、瘤増大をもたらす血行動態的パラメーターの探索が必要である。我々は4D-flow MRAを用いて、EL 分枝血管1本ずつの血行動態を解析することにより、EL血管におけるELが収束するか遷延するかをEVAR術後に予測可能とするパラメーターを発見した。すなわち術後に瘤径増大する因子として、この術後7日目に施行した4D-flow MRIにて残存するT2EL血管全ての血流量振幅対値の総和が重要であり、そのカットオフ値3750ml/minであることを突き止め、J Vasc Surg. 2019 Jul;70(1):107-116に発表した。2019年度研究ではこの研究を更に発展させて、動脈瘤が有する分枝全てを術前の4D-MRIデータを包括的に検討することにより、EVAR後に瘤増大をもたらす新たなパラメーターの探索とそのcut-off値の検討を行った。更には、前向きの研究として、このパラメーターを用いて瘤増大が予測されるcut-off値を上回る症例に対しては、EVAR手術と同時あるいは術前に介入(分枝血管の選択的塞栓など)するための臨床研究の計画を立案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 これまでの研究から、腹部大動脈瘤術後2型エンドリークに対する血行動体学的予後予測因子を探索的に研究した結果、動脈瘤分枝動脈が閉塞せずに血流が持続するパラメーターとして術後7日に実施した4D-flow MRIのデータから、1年後までにELが消失せずに残存した血管(T2EL血管)の瞬間最大流速値と血流量振幅(一心拍あたりの血流量の絶対値)が関係があることを突き止めた。そして術後に瘤径増大する因子として、この7PODでの全てのEL血管の血流量振幅対値の総和が重要であり、そのカットオフ値が3.75ml/minであることを突き止め、J Vasc Surg. 2019 Jul;70(1):107-116に発表した。しかしこのカットオフ値は術後7PODでの4D-flowMRIのデータ解析結果からもたらされたものであり、理想的にはEVAR施行時に分枝血管への介入が可能であることが望ましい。そのために2019年度から術前に撮影したの4D-flowMRIデータの解析を進めた。ここでも同様に術後に瘤径の増大する因子のカットオフ値の設定をretrospectiveに探索したところ、瘤分枝総血流量のカットオフ値 13.56ml/min以上でTypeIIエンドリークにより術後動脈瘤が増大することが感度100%、特異度91%で予測可能であることが判明した。したがって当初の予定計画通りに概ね推移している。
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今後の研究の推進方策 |
EVAR手術前に4D-flowMRIを施行する症例の蓄積を行うとともに、術後のAAA瘤径が縮小あるいは不変の症例群と、増大症例群とで、分枝動脈の血行動態の解析を引き続き進める。申請時の計画通り、術前の4D-flow MRIで測定したAAA分枝血管(IMAや腰動脈)の総延べ血流量に着目し、両群間で有意差を検討した。その結果そのカットオフ値についてROC曲線を求め、感度、特異度を検討は終了した。その結果、瘤分枝総血流量のカットオフ値 13.56ml/min以上でTypeIIエンドリークにより術後動脈瘤が増大することが感度100%、特異度91%で予測可能であることが判明した。今後は、術前のカットオフ値を超えた動脈瘤の分枝血管に対して、EVAR手術中あるいは手術前に塞栓術などで介入するための臨床研究計画を作成し、倫理委員会へ申請、認可の後、下腸間膜動脈や、腰動脈に塞栓術などをEVAR手術前あるいは同時に行い、前向きに検討を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染の蔓延のため、発表を予定していた国際学会の中止や、国内学会がweb開催になったことによる旅費が残り、翌年度分として計上した。また学内倫理委員会の認証が遅れたため、特定臨床研究に必要な保険加入費を使用せずに終わり、こちらについても翌年度分として計上した。
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