研究課題/領域番号 |
19K09270
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
逢坂 大樹 岡山大学, 医学部, 技術専門職員 (70839141)
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研究分担者 |
中谷 達行 岡山理科大学, フロンティア理工学研究所, 教授 (50520920)
笹井 泰志 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (60336633)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高分子ブラシの安定化 / Diamond-like carbon / anti-degrafting / MPCポリマー / コーティング剥離・塞栓予防 / 無機・有機ハイブリッド / 抗ファウリング効果 / 生体適合性向上 |
研究実績の概要 |
本研究の主目的である”Diamond-like carbon(DLC)/有機高分子ハイブリッド成膜技術を応用した人工血管開発”に向けて、初年度は土台となる成膜技術開発に取り組んだ。つまり、DLC成膜を施した基材表面(シリコンウエハー使用)に高密度の高分子ブラシを作成する手技確立に挑んだ。高分子ブラシの第一候補化合物として生体適合性ポリマーとして知られるMPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)を選択し、DLC表面に45nmのMPCポリマーブラシの合成に成功した。また、本研究成果の性能評価を行うための対照データ取得目的に、既存技術(MPCポリマーブラシの単体成膜)の性状評価を行った。具体的には、シリコンウエハー上にMPC単体成膜を行い、その物性および安定性を明らかにした。つまり、本研究での到達目標として、一つの具体的数値設定が可能となった。現時点では、DLC/MPCハイブリッド戦略により、安定性の面でDLC上にMPCポリマーブラシを構築する一定のメリットを示せている。医療機器・基材への応用には高い安全性が求められるため、まずは成膜素材の剥離・塞栓予防が非常に重要と考えている。よって、次年度は更なる性能向上を目指して最適な成膜条件を決定し、特許化も含めて進めて行く。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、固体表面でのDLCと有機高分子とのハイブリッド化法を確立し、DLCもしくは有機高分子単体よりも優れた特性を付与することである。つまり、DLC単体よりも生体適合性を向上させること、また、有機高分子単体よりも化学結合力(chemical bonding)を向上させることで剥離・塞栓等を予防することである。よって、本年は本目的を達成するために最も重要な基礎技術・成膜法の確立に取り組み、完全ではないものの、その成膜に成功した。さらに、本成膜法が従来法に比べて高分子ブラシの安定性に優位性が認められるものの、改善すべき課題も明らかとなった。本研究課題は人工血管への応用だが、さらに幅広い管腔医療材料への展開も当然視野に入れているため、高分子ブラシの更なる安定化技術と、高分子ブラシの物理化学的特性の理解が必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
DLC表面での高分子ブラシ薄膜層の合成方法確立と、その物性および安定性評価を完了させる。今年度中に成膜条件を決定し、可能であれば管腔材料への適応が成功した時点で特許化を考えている。また、生体適合性試験へ向けてテスト基材(ePTFE、シリコン)に成膜を行い、体外での全血接触試験、動物循環血中での接触試験を計画している。これら結果を踏まえて動物埋植試験(人工血管置換)へ移行し、non-coatingのcontrolと比べた性能向上(開存率、炎症惹起抑制等)を検証する。また、カテーテルへの応用に関しては、既存の親水性ポリマーをcontrolとして、DLCとのハイブリッド型親水ポリマーコーティングの性能評価を、親水性・すべり感の非劣勢、bonding力向上、剥離・塞栓予防の観点から検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品等について、当初の見積もり額よりも安価に実施することが出来た。繰り越しの6,614円は、翌年度に実施する検証に関する物品購入費にあてる。
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