研究課題/領域番号 |
19K09271
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
末田 泰二郎 広島大学, 医系科学研究科(医), 名誉教授 (10162835)
|
研究分担者 |
高橋 信也 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (70423382)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 脊髄虚血 / 拍動流体外循環 / 運動誘発電位 |
研究実績の概要 |
胸部大動脈手術後の脊髄障害による対麻痺は最悪の合併症である。胸部下行、胸腹部大動脈瘤に対する対麻痺治療としては臨床的に行い得るのは1)脊髄液ドレナージ、2)動脈圧を高く保つ2つの方法しかない。そこで拍動流による下半身動脈潅流を行い、下半身の動脈圧をあげて脊髄動脈の側副血行路の血流を良好にして脊髄虚血を防ぐ方法と、遮断した大動脈内の4℃冷却血液を注入して脊髄を保護する方法の、実験的論証を行うことを目的とする。 下半身潅流を拍動流にして脊髄血流が増加するか否かビーグル犬を用いた脊髄虚血再灌流障害モデルで組織血流計で脊髄血流を測り運動誘発電位(MEP)と同時に用いて検証する。 下半身灌流を拍動流にして、大動脈遮断中のMEPを測定したところ、40分および60分の時点でMEPは低下しなかった。この時の中枢側動脈圧は150~170mmHgから80~100mmHgに低下していた。瀉血モデルでの血圧は著しい低血圧(<40mmHg)であり、これを目標として体外循環操作を行った。中枢側動脈圧が低下するように体外循環の流量を増加させてもMEPは低下しないため、瀉血を併用したところ、体外循環の流量は低下し、MEPも低下(ベースラインの10-30%)した。再現性を持って脊髄虚血が得られたが、血中乳酸値が10mg/dl以上になるなど、全身虚血の影響が大きいと考えられた。 大動脈内に冷却血液を注入すると、MEPは低下していたが、虚血の影響か冷却の影響かは明らかにはしにくい状況であった。脊柱温は低下しており、何らかの効果は期待される状況であった。覚醒48時間後の下肢運動機能の結果も一様ではなく、データに示されない部分も含めたモデルの複雑性が影響しているものと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
モデルの作成自体は安定していると考えられるが、個体差から来ると思われる不安定性が、瀉血併用体外循環モデルの複雑さと合わさることにより、結果の再現性が得られていない。
|
今後の研究の推進方策 |
急性実験におけるモデルとしては要因が多く複雑なため、一定の結果が得られていないと判断している。体外循環および低血圧によって惹起される炎症性サイトカインなども含めた検討を加えることにより、体外循環モデルから瀉血モデルに移行する経過での群分けなどを行い、結果の一貫性が得られるように修正を加える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
3月分の飼育費が、経理の関係で4月となったためであり、29250円は次年度ではあるもの3月分の飼育費として払われる。
|