研究課題/領域番号 |
19K09276
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
岡村 誉 自治医科大学, 医学部, 講師 (70438646)
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研究分担者 |
木村 直行 自治医科大学, 医学部, 准教授 (20382898)
荒川 衛 自治医科大学, 医学部, 助教 (30624647)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | サルコペニア |
研究実績の概要 |
近年、サルコペニア(加齢に伴う全身の筋肉量・筋力の低下)が生命予後に影響すると注目されている。しかし心臓血管外科領域においてサルコぺニアの有無は通常の術前リスク評価方法 に含まれておらず、術後予後への影響も明らかではない。そこで今回我々は心臓・胸部大動脈手術患者における術前サルコペニアの予後に及ぼす影響を研究した。2009年から2013年までの期間に自治医大さいたま医療センターで心臓弁膜症に対して手術した患者1119名のうち、70歳以上の心臓弁膜症手術患者 428名において術前CTにて腸腰筋面積を腸骨稜上端レべルで計測し、腸腰筋面積の少ない下25%の患者群をサルコペニアと定義した。術前サルコペニアの有無で分けた2群の予後をカプランマイヤー曲線でログランク検定にて比較したところ、サルコペニア群で有意に術後遠隔生存率と主要心臓合併症回避率が低かった。また多変量解析においてもサルコペニアが術後遠隔死亡と主要心臓合併症の有意なリスク因子であることを確認した。Inverse probability weighting法においても同様な結果を確認した。これら研究結果を論文にし、Journal of Thoracic Cardiovascular Surgeryに投稿し、採択された。同様の研究を、冠動脈バイパス術や胸部大動脈手術患者においても行う。心臓・大血管手術患者において従来の腸腰筋面積の測定に加え、サルコペニアに関連するマイオカイン(骨格筋から放出されるサイトカイン)の測定、MRIによる腸腰筋の質的異常の診断および術前運動機能を調べ、術後長期予後に及ぼす影響を明らかにする。本研究は、サルコペニアの未だ解明されていない基礎的研究を完成し、術後長期予後を予測するサルコペニアの新たな診断基準の確立および治療への臨床応用に展開するための基盤となる研究を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2008年から2013年までの期間に自治医大さいたま医療センターで待機的単独冠動脈バイパス術を施行した患者304名において、術前CTにて腸腰筋面積をL3レベルで計測し、腸腰筋面積の少ない下25%の患者群をサルコペニアと定義した。術前サルコペニアの有無で分けた2群の予後をカプランマイヤー曲線でログランク検定にて比較したところ、サルコペニア群で有意に術後遠隔生存率とが低かった。また多変量解析においてもサルコペニアが術後遠隔死亡と主要心臓合併症の有意なリスク因子であることを確認した。Inverse probability weighting法においても同様な結果を確認した。主要心臓合併症回避率については術前サルコペニアは有意な独立危険因子ではなかった。これら研究結果を論文にし、European Journal of Cardio-Thoracic Surgeryに投稿し、採択された。 心臓・大血管手術患者において従来の腸腰筋面積の測定に加え、サルコペニアに関連するマイオカイン(骨格筋から放出されるサイトカイン)の測定も行っている。待機的術前患者から研究参加の同意を得た上で採血を行っている。今後検体が十分数集まったところでマイオカイン測定を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
冠動脈バイパス術後患者におけるサルコペニアの長期的な影響についての論文がEuropean Journal of Cardio-Thoracic Surgeryに採択された。同様に胸部大動脈手術患者においても術前CTにて腸腰筋面積をL3レベルで計測し、腸腰筋面積の少ない下25%の患者群をサルコペニアと定義し、術前サルコペニアの有無で分けた2群の予後をカプランマイヤー曲線でログランク検定にて比較する。さらに多変量解析やInverse probability weighting法においてもサルコペニアが術後遠隔死亡と主要心臓合併症の有意なリスク因子であることを確認する予定である。また同時に、胸部大動脈疾患、心臓弁膜症、冠動脈疾患患者において腸腰筋面積の影響のみならず術前にMRIを施行し、腸腰筋の変性・繊維化・脂肪変性の有無を評価することで術後予後や筋肉量との関連性を検討する。また加齢・サルコペニアのメカニズムに関与しているとされる種々の炎症性サイトカインを測定し、CTとMRIから測定された筋肉量や筋肉の質的異常との関連を調べて術後予後への影響を評価する。現在、待機的術前患者から同意を得た上で採血を行っており、これらが十分に集まったところで、マイオカイン測定ELISAキットを使用して、マイオカインを網羅的に測定し、臨床指標との関連性を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイオカイン測定キットを購入し測定予定だったが実施できなかった。次年度に購入し、施行する予定である。
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